圧状

圧状（あつじょう/えんじょう/おさえじょう/おうじょう）

概要

圧状とは、中世日本の法制度において用いられた用語で、作成者の自由な意思に基づかず、強制によって作成された文書全般を指します。具体的には、以下のような状況で作成された文書が圧状とみなされました。

権利譲渡などの文書の強要: 立場の強い者が弱い者に対し、権利譲渡や財産分与などに関する文書（乞索文）を強制的に作成させる。
裁判での虚偽証言の強要: 裁判において、事実と異なる証言を強要する。
拷問による白状書の作成: 地頭などの権力者が、拷問などを用いて無理やり白状させ、その内容を記した調書を作成させる。

これらの文書は、作成者の自由な意思に基づいて作成された文書（自由状・自発之状）とは対照的に扱われました。圧状は、作成過程に強制が伴うため、その内容の信頼性が疑われ、法的な効力を持ちませんでした。

圧状の法的扱い

圧状は、後日、作成者本人から強制によって作成されたものであるとの訴えが出された場合、または裁判で証拠として提出された文書が圧状であると裁判所が判断した場合、無効とされました。当時の裁判は証拠文書の審査が中心であったため、文書の信頼性は非常に重要でした。しかしながら、「圧状を責め取る（圧状の作成を強要して取得する）」こと自体は、謀書作成のような罪には問われなかったため、圧状の作成は広く行われていました。

圧状の作成背景

中世日本では、身分制度や社会的な格差が大きく、立場の強い者が弱い者に対して不当な要求を行うことが少なくありませんでした。圧状は、そのような状況下で、権力や暴力を用いて、自己の利益を優先するために作成されたと考えられます。

圧状と関連する概念

圧状は、偽文書や謀書といった、文書の信頼性に関わる問題と深く関連しています。特に、謀書は、虚偽の内容を記載した文書という点で圧状と共通していますが、圧状は、作成過程に強制が伴う点に特徴があります。中世社会においては、文書が持つ意味は非常に大きく、文書の作成過程や内容の真偽は、訴訟や社会的な関係において、重要な意味を持っていました。

まとめ

圧状は、中世日本の法制度において、強制によって作成された文書を指す重要な概念です。圧状の存在は、当時の社会における権力関係や、文書が持つ意味を考える上で、重要な視点を提供してくれます。

参考資料

羽下徳彦「圧状」（『国史大辞典 1』 吉川弘文館、1979年）
新田一郎「圧状」（『日本歴史大事典 1』 小学館、2000年）
井原今朝男「中世契約状における乞索文・圧状と押書」（『鎌倉遺文研究』第17号、2006年）
井原今朝男『日本中世債務史の研究』（東京大学出版会、2011年）

関連項目

偽文書
* 謀書

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