在日米軍再編

在日米軍再編：変容する日米同盟と地域社会の葛藤

2001年のアメリカ同時多発テロ以降、世界的な安全保障環境は劇的に変化しました。ソ連崩壊後の冷戦終結という地政学的転換を経て、新たな脅威への対応が求められる中、米国は世界規模で米軍配置の再編に着手します。この世界的な軍事的変革の一環として、在日米軍の再編も進められました。

再編協議と合意：不安定の弧への対応

再編協議は、東シナ海、北朝鮮、台湾海峡からインド洋、中東へと繋がる地域（「不安定の弧」と呼ばれる）への即応性を高めることを主要な目的としていました。この地域はテロや大量破壊兵器の脅威が高く、米国は警戒を強めていました。在日米軍は、これらの脅威への対応において、自衛隊との連携強化が不可欠とされました。

2005年、日米両政府は4閣僚会合（2プラス2）を開催し、在日米軍と自衛隊の再編に関する中間報告「日米同盟：未来のための変革と再編」で合意しました。この合意は、自衛隊と在日米軍の連携強化と、基地負担軽減策の両立を目指していました。しかし、この合意は「中間報告」という表現をめぐって、日米間で解釈の違いが生じるなど、その過程で様々な問題が浮き彫りになりました。

基地移転と地元住民の反発

中間報告では、いくつかの主要な基地機能の移転が決定されました。特に、沖縄県の普天間飛行場の代替施設建設は大きな争点となりました。辺野古への移設計画は、地元住民からの強い反対運動を招き、現在も大きな政治課題となっています。

沖縄以外でも、神奈川県の厚木基地や横須賀基地、山口県の岩国基地など、各地で基地移転や機能変更が計画され、多くの地域住民が、騒音問題や環境問題、基地の軍事一体化による懸念などを理由に、再編計画に反対しました。各地の議会では、計画の白紙撤回を求める決議が採択されたケースもあります。

主要な合意内容

沖縄県: 普天間飛行場の辺野古移設、第3海兵遠征軍のグアム移転、複数の基地の返還など。
神奈川県: アメリカ陸軍第1軍団のキャンプ座間への移転、相模総合補給廠の機能変更と一部返還、厚木基地への海上[[自衛隊]]の移転など。
東京都: 航空自衛隊航空総隊司令部の横田飛行場への移転。
山口県: 岩国基地への空母艦載機部隊移転。

原子力空母の横須賀配備：極秘協議と地元の反発

中間報告とは別に、2005年、日米両政府はニミッツ級原子力空母の横須賀基地への配備で合意しました。この決定は、地元自治体や住民に事前に十分な説明が行われず、一方的に通告されたことから、強い反発を招きました。神奈川県知事や横須賀市長は、政府の対応を批判し、配備の撤回を求めました。

岩国基地への空母艦載機部隊移転：住民投票と政治的対立

厚木基地から岩国基地への空母艦載機部隊移転計画も、地元住民からの強い反発を受けました。岩国市では、移転計画の賛否を問う住民投票が行われ、反対多数という結果となりました。この結果を受け、岩国市長は移転反対を表明しましたが、日米間の合意は維持され、計画はその後も進展しました。住民投票の結果を巡り、国と岩国市、そして岩国市内部でも激しい政治的対立が続きました。

再編計画のその後

在日米軍再編計画は、地元住民の反発や政治的対立を乗り越えながら、段階的に進められました。しかし、基地負担軽減や環境問題、日米同盟の将来像など、多くの課題は残されたままです。再編計画は、日米関係、安全保障、そして地域社会の未来に大きな影響を与え続けています。 この計画は、単なる軍事的な配置転換ではなく、日米同盟のあり方そのものを問うものでもあり、現在も様々な議論が続けられています。

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