在間島日本総領事館

在間島日本総領事館の歴史

在間島日本総領事館は、1909年11月2日に、間島協約に基づき、清の延吉県龍井村（現在の中華人民共和国吉林省延辺朝鮮族自治州龍井市）に設置された日本の領事館です。1938年に閉鎖されるまでの間、この領事館は、日本の朝鮮半島における影響力拡大の象徴として存在しました。

設立の背景

1909年、日本と清の間で締結された間島協約は、日本が間島の領有権を清に認める一方で、日本は間島における朝鮮人の居住権、領事館の開設、警察官の駐在権、そして吉林と朝鮮を結ぶ鉄道の敷設権を獲得しました。これにより、日本は間島における影響力を強化することを目指しました。

それ以前の1906年から1907年にかけて、日本は清国内に複数の在外公館を設置していました。安東（現丹東）、奉天（現瀋陽）、長春、吉林などです。1907年には、間島地域に韓国統監府臨時間島派出所が設置され、斉藤季治郎が所長に任命されました。この派出所は、日本の権益保護と朝鮮人住民の管理を目的としていました。

領事館の開設と活動

1909年11月1日、韓国統監府臨時間島派出所は廃止され、翌日、在間島日本総領事館が龍井に開設されました。初代総領事は永滝久吉、代理総領事は鈴木要太郎でした。その後、局子街（現延吉）と頭道溝にも分館が設置されました。また、1910年には百草溝に出張所が設けられました。現在、頭道溝消防署の裏には、朽ち果てた頭道溝日本領事館分館の遺構が残っています。

日清間の協約に基づき、間島在住の朝鮮人に対する裁判権は日本側が持つことになりました。1910年には「間島における領事官の裁判に関する法律」が公布・施行され、日本の領事館が裁判権を行使しました。この法律は、後に改正され、間島在住の朝鮮人に対する裁判権は、必要に応じて朝鮮に移されることも規定されました。

1911年には、総領事館と日本人住宅で大規模な火災が発生しました。また、1919年の三・一運動の際には、間島でも独立運動が起こり、領事館は独立運動の取り締まりに協力しました。

事件と閉鎖

1920年代には、間島で複数の事件が発生しました。1920年には第二次琿春事件、1922年には頭道溝事件が発生し、日本人や朝鮮人が犠牲になりました。これにより、日本の警察力が増強され、間島の緊張が高まりました。1922年には、龍井の総領事館が火災で焼失し、後に再建されました。

1927年から1930年にかけて、治安維持法に基づき、朝鮮共産党関係者を検挙する「間島共産党事件」が複数回発生しました。1932年に満州国が建国されると、間島の地位は大きく変化しました。満州国は間島省を設置し、図們市に新たな領事館分館が設置されました。1937年には間島における治外法権が撤廃され、1938年3月11日、在間島日本総領事館は閉鎖されました。

民間説話

龍井の日本総領事館の建設にまつわる「牛の皮一枚」伝説は、中国朝鮮族の間に語り継がれています。この伝説は、領事が牛の皮一枚分の土地を求めて、それを細く切った革紐で広大な土地を囲い込み、そこに領事館を建てたというものです。この話は、世界各地に存在する類似の伝説と共通する要素を持っています。

在間島日本総領事館は、その設立から閉鎖まで、日本の権益拡大と朝鮮半島の情勢に深く関わった重要な存在でした。その歴史は、当時の国際関係や民族問題を考える上で、重要な教訓を与えてくれます。

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