地下鉄飛車

地下鉄飛車：将棋における奇襲戦法

地下鉄飛車は、将棋の戦法の一つであり、主に飛車を盤の端に配置して攻め立てる戦法です。その名の通り、飛車が盤上を縦横無尽に動き回る様子を、地下鉄の路線網に見立てて名付けられました。

戦法の概要

この戦法は、まず飛車を1段目（下段）に引き、その後、端の香車を活用して飛車を盤の端（1九または9九）に移動させることから始まります。この際、下段に引いた飛車の状態を「下段飛車」と呼び、そこから端の香車を動かすことで、まるで地下鉄のトンネルが開通したかのようなイメージから、この戦法名が付けられたと言われています。

地下鉄飛車は、主に振り飛車穴熊や右玉といった守備的な囲いに対して有効な戦法として知られています。特に穴熊囲いに対しては、玉の退路を断つことで、相手を詰みに追い込むことも可能です。また、相手が右玉を採用した場合でも、玉に近い位置から攻撃を開始できるという利点があります。

しかし、地下鉄飛車は、1段目の駒を全て2段目に移動させる必要があるため、守備力が低下しやすく、また戦術的な選択肢が制限されるというデメリットも抱えています。そのため、プロの棋士の間でも頻繁に用いられる戦法ではありません。

地下鉄飛車の具体的な手順と展開

地下鉄飛車の具体的な手順は、局面によって様々ですが、一般的には以下の様な手順で進行します。

1. 下段飛車の構築: まず、飛車を下段に引いて、基本的な陣形を構築します。
2. 香車の活用: 端の香車を活用して、相手の陣形に侵入する道を切り開きます。
3. 飛車の転換: 香車などを活用して攻めやすい場所を確保した後、飛車を盤の端に転換します。
4. 集中攻撃: 飛車、角行、桂馬などを集中させて、相手の玉を攻撃します。

地下鉄飛車と類似の戦法

地下鉄飛車と類似した戦法として、以下のものがあります。

風車: 飛車を盤の端に配置する点は共通していますが、地下鉄飛車よりも攻撃的な戦法です。
左玉: 玉を盤の左側に囲う戦法で、地下鉄飛車と同様に、相手の攻撃に対して柔軟に対応できるのが特徴です。
高田流左玉: 相振り飛車雁木模様から向かい飛車に転換して指す戦法で、玉を左に囲い、大駒交換後の打ち込みに強いのが特徴です。

地下鉄飛車の歴史と発展

地下鉄飛車は、古くから存在する戦法ですが、近年ではプロ棋士の間でも注目を集めています。特に、近年ではコンピュータ将棋の発展により、地下鉄飛車の新たな可能性が模索されています。

まとめ

地下鉄飛車は、独特の戦法で、穴熊や右玉といった守備的な囲いを攻略するのに有効な手段です。しかし、守備面でのデメリットも存在するため、戦術的な選択が重要になります。この戦法を理解することで、将棋の戦略の幅を広げることができるでしょう。

参考文献

豊川孝弘著『パワーアップ戦法塾』NHK出版、2002年
* 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年

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