左玉

左玉：相振り飛車における巧妙な玉の配置

左玉は、将棋の相振り飛車において用いられる戦法の一つです。その名の通り、玉を自陣の左側へ囲うことで、相手の飛車の攻撃を間接的に回避することを目指します。一見、玉を飛車に近づけるため危険なように思われますが、実際はバランスに優れ、自陣に隙を生じにくく、柔軟な対応を可能にする戦法として知られています。

左玉の特徴と利点

相振り飛車では、玉を右側に囲うと、相手の飛車の攻撃を正面から受けることになります。しかし、左玉は玉を左側へ配置することで、飛車の攻撃範囲から距離を置くことができます。この距離感が、左玉の大きな強みです。

バランスの良さ:　左玉は、自陣に大きな弱点を作ることなく、バランスのとれた陣形を構築できます。無理な攻めを仕掛けず、着実に陣形を固めながら戦うスタイルです。
自玉の懐の広さ: 玉の周囲に余裕があるため、相手の攻撃に対して柔軟に対応し、逃げ道が豊富にあります。窮地に陥りにくい点が大きなメリットです。
持ち駒の活用: 右辺が薄くなるという欠点がありますが、その弱点を、飛車、角、銀、桂といった持ち駒を駆使した攻めや、右辺での攻防で得た優位性を生かしてカバーします。玉の遠さを利用し、中盤以降、攻勢に転じることも可能です。

左玉と他の戦法との違い

左玉は、▲8九飛と飛車を下段に引いた状態である「一段飛車」とは区別され、6筋位取りや7筋位取りとは異なる戦法です。また、9筋に飛車を転換して端攻めを狙う「地下鉄飛車」とも明確に区別されます。

左玉の欠点と対策

左玉の最大の弱点は、右辺の薄さです。相手の攻勢を受けやすく、適切な対策が不可欠です。この弱点を克服するために、

堅実な守備: 急いで攻めるのではなく、まずは堅実な守備を構築することが重要です。
持ち駒の有効活用: 持ち駒を効果的に活用することで、右辺の弱点を補強し、反撃の機会を伺います。
攻防のバランス: 攻めと守りのバランスを常に意識し、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。

ひねり飛車における左玉

左玉は、相振り飛車だけでなく、ひねり飛車戦においても用いられることがあります。ひねり飛車側が玉を左側に囲うことで、独特の戦術的な深みを生み出します。1983年第22期十段戦予選トーナメント、▲福崎文吾vs△谷川浩司戦などがその一例です。

左玉を学ぶための参考文献

左玉の戦術をより深く理解するためには、以下の書籍が参考になります。

小林健二『相振り飛車で左玉戦法居飛車で右玉戦法』創元社出版、2013年10月10日。ISBN 978-4-422-75142-9
高田尚平『高田流新感覚振り飛車破り』毎日コミュニケーションズ、2000年9月1日。ISBN 978-4-8399-6704-8

左玉は、一見リスクの大きい戦法に見えるかもしれませんが、そのバランスの良さ、柔軟性、そして持ち駒の有効活用によって、高い勝率を期待できる戦法です。将棋の奥深さを味わいたいプレイヤーにとって、魅力的な戦法と言えるでしょう。

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