右玉

右玉：攻守のバランスがとれた将棋戦法

右玉は、将棋における独特な戦法です。一般的な居飛車戦法とは異なり、自玉を盤の右側に配置することで、相手の攻撃を回避し、反撃の機会を伺います。一見すると、玉を敵陣近くに配置するという点で危険に見えるかもしれませんが、巧妙な戦略によって、攻守のバランスをとった戦いを展開できます。

右玉の特徴：柔軟性と反撃力

右玉の最大の利点は、相手の攻撃に対して柔軟に対応できる点にあります。特に、相手が居飛車から攻めてきた場合、自玉を左側に囲うと正面からの攻撃を直接受けることになります。しかし、右玉であれば相手の攻撃範囲から距離を置くことができ、攻撃の効果を抑制できます。

さらに、右玉は反撃の機会も豊富に生み出します。例えば、相手が左翼から攻めてきた場合、4五歩、2四歩と飛車角桂を連携させ、相手の玉頭にカウンター攻撃を仕掛けることができます。また、飛車を振って左翼からの攻撃に備えることも可能です。一見、玉を危険な位置に置くように見える右玉ですが、実は、その配置こそが巧みな防御と鋭い反撃を可能にしているのです。

右玉の多様な流派

右玉は、単一の戦法ではなく、いくつかの流派が存在します。それぞれの流派は、玉の配置や駒組み、戦術に独自の工夫を凝らしており、状況に応じて使い分けられます。

糸谷流右玉: 対振り飛車、特に対ゴキゲン[[中飛車]]において高い効果を発揮します。玉を中央に据え、飛車を左辺に回して振り飛車の玉頭を攻撃するなど、積極的な攻めを仕掛けます。
羽生式右玉: 角換わりの後手番で用いられる戦法です。7二金6二玉型という独特の玉の配置が特徴で、角換わり早繰り銀に対して高い勝率を誇ります。将棋ソフトが愛用していた作戦としても知られ、羽生善治棋聖によってタイトル戦でも使用されたことで広く知られるようになりました。
* セカステ右玉: 将棋倶楽部24の強豪プレイヤー「SecondStage」が愛用していたことから名付けられた戦法です。角換わり腰掛け銀で、先手番では▲5六銀～▲4七金～▲4八玉の形に構えます。昭和時代には内藤九段も類似の戦法を採用していました。

これらの流派以外にも、様々な右玉の戦法が存在し、それぞれの戦術が研究されています。

右玉への対策

右玉は強力な戦法ですが、対策を講じることで効果を抑制することができます。具体的な対策としては、陽動振り飛車や地下鉄飛車などが挙げられます。また、穴熊や急戦といった戦法も有効です。

右玉への対策は、相手の戦法や展開に応じて柔軟に選択する必要があります。相手の出方を見極め、適切な戦術を選択することが重要です。

右玉の歴史

右玉は古くから存在する戦法であり、江戸時代の大橋宗桂対本因坊算砂戦にもその記録が残っています。その後も、大山康晴九段や灘蓮照九段など、多くの棋士が右玉を採用してきました。現代将棋においても、糸谷哲郎八段や羽生善治九段といったトップ棋士が右玉を用いるなど、右玉は進化を続けながら、現代将棋の一つの重要な戦法として生き続けています。

まとめ

右玉は、一見危険に見える玉の配置にも関わらず、その柔軟性と反撃力で多くの棋士を魅了してきた戦法です。様々な流派が存在し、現代将棋においても有効な戦法として注目されています。今後も、右玉の研究は進み、新たな戦術が開発されていくことでしょう。

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