地方改良運動

地方改良運動とは

地方改良運動は、日露戦争後の日本において、疲弊した地方社会と市町村の立て直しを目的とした官製運動です。この運動は、1909年7月に開催された地方改良事業講習会を機に「地方改良運動」と呼ばれるようになりました。第二次桂内閣が発した戊申詔書をきっかけに、内務省が中心となって本格的に推進されました。

日露戦争で列強の仲間入りを果たした日本でしたが、戦費調達のための増税により地方財政は破綻寸前に陥り、地方の疲弊と荒廃は深刻な状況でした。このような状況を打開するため、1908年10月13日に戊申詔書が発せられ、地方、特に市町村の財政再建、財政基盤の整備、人材育成、そして国民教化が目指されました。

事業の概要

地方改良運動は、日露戦争終結直後から開始されていました。1906年5月には、地方長官会議で内務省から「地方事務ニ関スル注意参考事項」として11項目が提示されました。この中で、町村と神社との関係に関する事項、町村財政の確立に関する事項、町村経済の強化に関する事項が、特に重要な項目として扱われました。

この事業を強力に進めるため、第二次桂内閣は戊申詔書を発布しました。1909年6月には、地方長官会議で平田東助内務大臣が、戊申詔書に基づき実施された納税組合や部落有財産統一などの政策が、町村財政の基盤強化に貢献していると報告しました。さらに、地方改良運動を徹底するため、地方改良事業講習会の開催や、貢献者に対する表彰も実施されました。

地方改良事業講習会

地方改良事業講習会では、道府県官、郡官、市町村吏員が招集され、地方自治、地方財政、農事改良、普通教育、青年教育などの講義が行われました。この講習会は全国各地の道府県でも開催され、地方改良運動の推進に貢献しました。

主な開催時期

第1回 1909年7月
第2回 1909年10月
第3回 1910年6月
第4回 1910年9月
第5回 1911年6月

地方改良運動の施策

地方改良運動では、様々な施策が実施されました。

納税組合

危機的な状況にあった町村財政を立て直すため、全国的に納税組合の設置が推進されました。これは、増大する税の滞納を防止するためのもので、納税義務を持つ全ての住民に加入が求められました。

町村合併

町村の財政基盤を強化する目的で、第一次西園寺内閣の原敬内務大臣が町村合併を推進しましたが、郡制廃止問題との関連から山県系官僚の強い反対に遭い、第二次桂内閣では進められませんでした。

町村基本財産の蓄積

町村財政を強化するため、税収以外の財源、例えば使用料や手数料などを蓄積することが図られました。しかし、実際には「歳計剰余金」や「国税徴収法及府県税徴収法ニ依リ収入スル交付金」、「戸籍法ニ依リ収入スル手数料」などが主な財源となり、財政強化に直接繋がるものではありませんでした。

参考文献

宮地正人『日露戦後政治史の研究』東京大学出版会、1973年。

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