郡制

郡制の概要

郡制（ぐんせい）は、1890年（明治23年）に初めて公布され、明治32年3月16日の法律第65号により改正された、日本の地方自治体制度の一部です。この制度は、府県と町村の間に位置する行政単位としての郡を定義し、その運営について法律で規定しました。郡制の背景には、1878年（明治11年）に制定された郡区町村編制法による大区小区制の廃止があり、これにより新たな行政区画として郡が復活したことが影響しています。

当初、郡には郡役所が設けられ、郡長（官選）がその運営にあたりました。郡は、府県に比べて小規模ながらも町村では対処できない事務を処理する役割を担っていました。このように、郡は府県と町村の中間に位置し、両者を結びつける重要な機関として機能しました。

郡制においては、自治団体としての郡に対し、理事機関である郡長と議決機関の郡会、また各町村の代表が集まる郡参事会が設けられました。郡会議員の選出方法には特徴があり、議員の3分の2は各町村議会で互選され、残りの3分の1は土地の地価が1万円以上の大地主から互選されました。後の法改正によって、議員の選出は直接選挙に変更されました。また、郡参事会は郡長と府県知事が任命した名誉職のメンバーで構成されています。

郡制の下では、郡は内務大臣や府県知事の監督を受けており、郡長には独自の課税権が与えられていませんでした。そのため、郡は中央政府の政策を町村に伝える出先機関としての役割しか持たず、実質的には自治体としての機能は限られていました。

郡制の施行に際しては、分置廃合に対する反対が強く、全国的に施行されたのは1899年に法律が全面改正されてからのことでした。ところが、郡制は行政の複雑化を招いただけでなく、その実績は乏しかったため、政治的には早期から廃止が求められました。特に立憲政友会は1906年に郡制の廃止案を衆議院に提出しましたが、この提案は当初は否決されました。

その後、政友会の原敬が首相に就任すると、郡制の廃止が本格的に進められ、1921年に「郡制廃止ニ関スル法律案」が可決されました。この結果、1923年に郡制は正式に廃止され、郡会も同時に消滅しました。ただし、郡長と郡役所は残務処理のために1926年まで存続しました。

岡山県の事例には、郡役所の廃止に伴い、最後の郡長会議が開催されたことが記録されています。この会議では、御真影の奉還式や郡吏員の慰霊祭、功労者の表彰式が行われました。

郡制が廃止された後、郡という名称はただの地理的分け方として残存することとなり、戦時中の1942年には内務省によって地方事務所が郡単位で設置され、結果的に郡役所が復活する形となりました。これにより、郡が省略の象徴から行政の一部として再び機能することが見られました。

施行日

郡制が施行されるにあたって、全国各地での導入日時は次の通りです。

• - 1891年（明治24年） 4月1日: 青森県、秋田県、山形県、福井県、長野県、愛知県、徳島県、高知県、大分県

7月1日: 石川県
8月1日: 山梨県

• - 1894年（明治27年） 4月1日: 宮城県
• - 1896年（明治29年） 6月1日: 富山県、熊本県

7月1日: 茨城県、兵庫県、福岡県
- 1897年（明治30年） 1月1日: 新潟県

• - 1899年（明治32年） 4月1日: 岡山県

このように、郡制は日本の地方自治の発展とともに進化し、またその解体も地域行政の変化を反映する重要な制度でありました。

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