地獄 (1979年の映画)

映画『地獄』の概要

1979年に公開された日本映画『地獄』は、東映によって制作され、ホラージャンルに分類されます。監督は神代辰巳が務め、カラーで131分の作品です。本作は、日活ロマンポルノを経て東映に参加した神代監督による、特異な視点から描かれた物語となっています。物語は、姦通や近親相姦の罪を犯した母娘が、世間の目にさらされながら地獄に堕ちていく様子を描いており、その過程は卑俗趣味を色濃く反映しています。

制作背景

制作の企画者である当時の東映社長岡田茂は、地獄をテーマにした作品を新たな視点で描くことを決意しました。神代辰巳監督の起用により、より生々しい人間性を描写することが狙われていました。岡田社長は、地獄のビジュアルを追求し、特に『エクソシスト』に触発された恐怖感を表現したいと語っています。実は、本作の企画は1969年に遡り、異常性愛路線の映画として考案されていましたが、多くの試練を経て形となりました。

制作の過程では、岡田からの要求に応じて脚本も修正され、最終的には田中陽造による不倫に関する因果応報の物語として完成しました。キャスティングにおいては、主役の一人を演じた原田美枝子が特に注目され、彼女は「性的な情念を演じられるか不安だが挑戦したい」と述べ、最終的には出演を決めました。また、栗田ひろみもエキセントリックな娘役として出演し、芸能界引退前の最後の作品となりました。

撮影と公開

撮影は1978年に開始され、約7ヵ月かけて行われました。特筆すべきは、撮影時に大分県などでのロケハンが行われ、実際に寒冬の中でシーンを撮影するなど、厳しい環境の中で制作が進められたことです。公開前には、神代監督自らが映画の宣伝活動に取り組み、観客を喚起するためのユニークなアイデアを次々と提案しました。特に、地獄をテーマにした「地獄祭り」を開催する計画は注目を集めました。実際に、公開日は1979年6月3日に決定され、テアトル東京で封切られました。

興行成績と評価

公開後の興行は、岡田社長が見込んでいたほどの成功には至らず、マスコミからの評価も厳しいものでした。『キネマ旬報』を始めとしたメディアは、作品そのものの出来栄えや主役の演技について辛辣な批評を行い、岡田社長も「二度と神代監督には映画を撮らせない」と激怒したという話も残っています。

とはいえ、作品に対する評価は分かれており、高橋克彦は「ベスト3に入るほどの傑作」と称賛し、物語の深層を支持する意見もありました。地獄をテーマにした本作は、その後の邦画においても独特な位置を占めています。

同時上映作品

本作と同時に上映されたのは、若松孝二監督による『餌食』でした。この組み合わせは観客にどのような印象を与えたのでしょうか。

結論

『地獄』は、ただの恐怖映画に止まらず、人間の愛憎や因果を描いた意義深い作品です。当時の観客や映画関係者の間で様々な反響を呼び、本作は記憶に残る作品として今も語り継がれています。

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