地獄からの脱出

『地獄からの脱出』（Dynasty）は、1979年にキッスが発表した7枚目のスタジオ・アルバムです。

解説

1978年9月、キッスのメンバー4人は同時にソロ・アルバムを発表しました。本作では、ピーター・クリスのソロ・アルバムのプロデューサーだったヴィニ・ポンシアが起用され、従来の無骨なハード・ロックから音楽的な方向転換を図りました。

当時、クリスはアルコールや麻薬の影響で満足に演奏することが難しい状況にありました。そのため、自作曲である「ダーティ・リヴィン」のみの参加となり、それ以外の収録曲では、エース・フレーリーのソロ・アルバムに参加していたアントン・フィグがドラムを担当しました。

ポンシアとデズモンド・チャイルドを共同制作者に迎え、当時流行していたディスコ・ビートを大胆に取り入れた「ラヴィン・ユー・ベイビー」を筆頭に、キャッチーでポップな楽曲が多数収録されています。ローリング・ストーンズの「2,000マン」のカバーを含む3曲で、フレーリーがリードボーカルを務めており、彼の存在感が際立っています。一方で、ジーン・シモンズがリードボーカルを務める曲は2曲のみで、彼の影が相対的に薄いアルバムとなっています。

1979年5月に発表された本作は、RIAA（アメリカレコード協会）のトリプル・プラチナムを獲得するなど、商業的な成功を収めました。同年6月から12月にかけて行われたツアーは、クリスが脱退前に参加した最後のツアーとなりました。

収録曲

1. ラヴィン・ユー・ベイビー - I Was Made for Lovin' You [3:57]
作詞/作曲：デズモンド・チャイルド、ヴィニ・ポンシア、ポール・スタンレー
リード・ヴォーカル：ポール・スタンレー
当時流行していたディスコ・ビートを取り入れ、キャッチーなメロディとコーラスが特徴です。Billboard Hot 100で11位にランクインする大ヒットとなりました。2005年には、キヤノンのデジタル一眼レフカメラのCMで子供たちによって替え歌が歌われました。

2. 2,000マン - 2,000 MAN [4:53]
作詞/作曲：ミック・ジャガー、キース・リチャーズ
リード・ヴォーカル：エース・フレーリー
ローリング・ストーンズのアルバム『サタニック・マジェスティーズ』（1967年）収録曲のカバー。1996年にキッスが『MTVアンプラグド』に出演した際、脱退していたフレーリーとクリスがゲスト出演し、スタンレー、シモンズと共に同曲を演奏しました。

3. シュア・ノウ・サムシング - Sure Know Something [3:59]
作詞/作曲：ヴィニ・ポンシア、ポール・スタンレー
リード・ヴォーカル：スタンレー
「ラヴィン・ユー・ベイビー」に続いてシングル・カットされ、Billboard Hot 100で44位まで上昇しました。1996年のMTVアンプラグドでも演奏されています。

4. ダーティー・リヴィン - Dirty Livin' [4:16]
作詞/作曲：ピーター・クリス、ヴィニ・ポンシア、スタン・ペンリッジ
リード・ヴォーカル：クリス
本作でクリスが参加したのはこの曲のみです。

5. カリスマ - Charisma [4:26]
作詞/作曲：ジーン・シモンズ、ハワード・マークス
リード・ヴォーカル：シモンズ

6. マジック・タッチ - Magic Touch [4:40]
作詞/作曲：ポール・スタンレー
リード・ヴォーカル：スタンレー

7. ハード・タイムス - Hard Times [3:59]
作詞/作曲：エース・フレーリー
リード・ヴォーカル：フレーリー

8. エックスレイ・アイズ - X-Ray Eyes [3:42]
作詞/作曲：ジーン・シモンズ
リード・ヴォーカル：シモンズ

9. セイヴ・ユア・ラヴ - Save Your Love [4:39]
作詞/作曲：エース・フレーリー
リード・ヴォーカル：フレーリー

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