地獄のテレワーク電脳戦士ヤスダ対暗黒企業

概要

『地獄のテレワーク電脳戦士ヤスダ対暗黒企業』（じごくのテレワークでんのうせんしヤスダたいあんこくきぎょう）は、2020年に日本で制作された短編映画です。監督は中元雄が務めました。この作品の最大の特徴は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛期間中に、制作の全ての工程が完全なリモートワーク体制で行われた点にあります。

当時、世界中で人々の生活が制限される中、本作は出演者を含む全ての関係者が自宅などから各自で撮影を行い、編集やその他の作業も全て遠隔で完遂するという手法で作り上げられました。監督の中元雄が2020年4月15日に制作を発表し、メインの女性キャストやマンション住人役のエキストラ募集を経て、同年5月3日には自身のYouTubeチャンネルを通じて公開されました。

スタイルと影響

本作の視覚的なスタイルは極めてユニークです。ほぼ全編がPC画面上での出来事として描かれており、キャストがFaceTimeなどのビデオ通話ツールを使用しているような画面構成となっています。この手法は、監督が公開当時に感銘を受けた2018年のアメリカ映画『search/サーチ』に倣ったものです。また、物語の終盤における意外な展開については、別の作品である『街頭技巧ストリートテクニック』からの影響を受けているとされています。

物語（あらすじ）

物語の中心となるのは、プログラマーのヤスダです。彼は勤続5年目のベテランながら、やや頼りない人物として描かれます。新型コロナウイルス対策のため在宅勤務を余儀なくされているヤスダの唯一の楽しみは、なんと盗撮でした。特に、偶然にも隣の部屋に引っ越してきた若い女性の部屋にカメラを仕掛け、その生活を覗き見することを日々の慰めとしていました。

ある日、会社の遠隔会議中に上司から厳しく𠮟責され、不満を募らせたヤスダは、その鬱憤を晴らすかのように再び隣室の女性を覗き見します。しかし、その女性が取り始めた行動は、ヤスダの想像を遥かに超えるものでした。単なる覗き見が、やがて壮絶な事態へと発展していく中、ヤスダは果たしてこの状況から抜け出し、あるいはヒーローとして行動することができるのかが問われます。

主な登場人物（キャスト）

ヤスダ（演：安田ユウ）：物語の主人公。在宅勤務中のプログラマーで、盗撮を趣味とする。テンパりやすい性格。
スズキ（演：豊田真希）：ヤスダの隣室（203号室）に越してきた女性。クローゼットに何か秘密を隠している様子。
タカハシ（演：茶谷優太）：ヤスダの友人。外出自粛要請にも関わらず、外へ飲みに出かけようとするなど、ヤスダとは対照的な価値観を持つ。
社長（演：大迫茂生）：ヤスダが勤務する会社の社長。リモート会議中に猫を可愛がる一面も。
ウエノ（演：上埜すみれ）：ヤスダの上司。オンラインでの会議中は真面目だが、社長が離席すると態度が豹変する二面性を持つ。仕事の進捗が思わしくないヤスダを厳しく𠮟りつける。

この他にも、ヤスダが住むマンションの個性豊かな住人たちが多数登場し、物語に彩りを添えています。

スタッフ

監督・脚本・編集・PC画面制作：中元雄
音楽：masaki kawasaki
ミックスエンジニア：伊藤隆文
タイトルデザイン：髙橋剛士

評価と反響

本作はリモート制作という新しい試みを行った作品として、他の映画制作者からも注目を集めました。同じくリモートでの映画製作に挑戦していた映画監督の上田慎一郎は、そのエンタテインメント性の高さと技術力を評価し、特に終盤の展開に興奮したと語っています。また、映画監督の松本大樹は、本作と上田監督の作品に触発され、自身のリモート映画制作を開始するきっかけとなったことを明かしています。

さらに、松竹が主催した「#リモート映画祭」にも出品されました。規定の動画時間を超過していたものの、映画祭の募集開始以前に既に完成していた点が考慮され、特例での参加が認められました。結果として一次選考を突破し、グランプリ候補作品22本の一つに選出されるという成果を上げました。

松竹の映像戦略室長である片岡佑輔は、「松竹社員が選んだ、イチ押し作品」の一つとして本作を推薦。その理由として、盗撮映像を物語の推進力とするアイデアの斬新さや、『search/サーチ』を思わせる意外な展開の連続を挙げて、本作の高い評価を示しています。

このように、『地獄のテレワーク電脳戦士ヤスダ対暗黒企業』は、困難な状況下で生まれた独創的な発想と制作手法、そして観客を惹きつけるエンタテインメント性が高く評価された作品と言えるでしょう。

外部リンク

【リモート映画】テレワーク中にヒマだったので隣の女性を盗撮してみた【在宅映画制作】 - YouTube ※実際のリンクは提供されていません

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