地獄の軍団 (アルバム)

『地獄の軍団』(Destroyer)は、1976年にキッスが発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、彼らの音楽キャリアにおいて重要な転換点となりました。このアルバムには、「デトロイト・ロック・シティ」、「狂気の叫び」、「雷神」、「ベス」など、今日でもキッスを代表する楽曲が数多く収録されています。

解説

アリス・クーパーなどを手掛けたボブ・エズリンをプロデューサーに迎えたことで、キッスの音楽性は大きく変化しました。前作『地獄への接吻』（1975年）までのシンプルなロックンロールから脱却し、エズリンは多重録音によるギター・オーケストレーション、オーケストラや様々なサウンド・エフェクトを導入しました。これにより、アルバムはドラマティックで重厚なハードロック作品として完成しました。

しかし、体系的な音楽教育を受けていないメンバーにとって、エズリンとのレコーディング作業は非常に困難なものでした。ポール・スタンレーは後に「あのレコーディングはBootcamp（新兵訓練）だった」と述べていますが、同時に「あれのおかげで相当に経験を積むことができた」とも語っています。ジーン・シモンズも「俺たちにはまさに当時、それが必要だったんだ」と述べています。

エース・フレーリーは、エズリンが描いたプランどおりにプレイせず、スタジオ内でしばしば対立しました。フレーリーが抵抗したため、エズリンはセッション・ギタリストのディック・ワグナーをスタジオに呼び、「リードギターを交代させる」と脅して、ようやくフレーリーを納得させました。その結果、「燃えたぎる血気」のアコースティック・ギターと「スウィート・ペイン」のリード・ギターはワグナーが演奏したものに差し替えられました。本作は、メンバー以外のミュージシャンの演奏が収録された初のアルバムとなりました。

アルバムはアメリカで85万枚を売り上げ、プラチナ・ディスクを獲得し、全米アルバム・チャートで11位を記録しました。

収録曲

1. デトロイト・ロック・シティ - Detroit Rock City
コンサートのオープニング・ナンバーとして長きにわたって演奏された代表曲。中盤のツイン・リードギターによるソロ・パートは、メンバーではなくエズリンによるもの。
2. 暗黒の帝王 - King Of The Night Time World
3. 雷神 - God Of Thunder
もともとはスタンレーが自分で歌うために書いた曲だったが、エズリンに「この曲はジーンが歌うべきだ」と言われたためにシモンズが歌うことになった。
4. 地獄の遺産 - Great Expectations
オーケストラと少年合唱団が起用された。
5. 燃えたぎる血気 - Flaming Youth
6. スウィート・ペイン - Sweet Pain
7. 狂気の叫び - Shout It Out Loud
Aメロはスタンレー、Bメロはシモンズがヴォーカルを担当。イントロとサビのメロディが特徴的。
8. ベス - Beth
ヴォーカルは作者のピーター・クリス。最初のタイトルは“Beck”だったが、シモンズが「女の子の名前にすべきだ」と提案し、このタイトルになった。
9. ドゥ・ユー・ラヴ・ミー - Do You Love Me
ニルヴァーナがライブで演奏したほか、デフ・レパード加入前のフィル・コリンが在籍したガールがカヴァーした。
10. Rock And Roll Party
* 「地獄の遺産」の少年合唱団のコーラスに『地獄の狂獣 キッス・ライヴ』に収録されたスタンレーのステージ進行（MC）を重ねたもの。当初のタイトルは"Rock'n Roll Demon"だった。

『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・グレイテスト・アルバム500』において、489位にランクイン。

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