地球の出

アポロ8号と人類を震撼させた一枚の写真「地球の出」

1968年12月24日、アポロ8号の宇宙飛行士ウィリアム・アンダースは、人類が初めて月を周回するミッションの中で、歴史的かつ象徴的な一枚の写真を撮影しました。それが、後に「地球の出」として知られるようになる写真です。この写真は、地球環境問題への意識の高まりに大きく貢献し、数々の環境運動のアイコンとなりました。

撮影の瞬間：予定外の奇跡

アポロ8号は、人類を月に送り込むための重要な一歩となる有人月周回飛行を行いました。地球の出の写真は、そのミッション中に、月の軌道上から撮影されました。船長のフランク・ボーマンが先に白黒写真で地球を捉えた後、アンダースがカラーフィルムで撮影したこの写真は、NASA image AS8-14-2383として記録されています。ボーマンとアンダース、そしてロン・ラヴェルは、同じ場所から複数枚の写真を撮影しており、その様子はミッションの録音テープに記録されています。録音から、ボーマンの指示のもと、アンダースとラヴェルが積極的に撮影に協力したことがわかります。アンダースが最初に撮影し、ラヴェルが設定値を記録した後、アンダースが異なる露出でさらに2枚の写真を撮影しました。

ボーマンは自伝で、この写真の白黒版を掲載し、アンダースが撮影したものを自分が受け取って撮影したと述べています。しかし、この記述は、実際にはアンダースが主体となって撮影を行っていたことと矛盾しています。彼の自伝に掲載されている「地球の出」は、アンダースが撮影した写真と類似しているものの、水平方向に反転され、切り取られた状態で印刷されています。一方で、アメリカ郵政公社が発行したアポロ8号を記念する切手には、アンダースの写真が忠実に再現されています。

地球の姿：新たな視点

「地球の出」の写真では、地球は南極が左、北極が右を向いており、赤道は西から右上隅へと斜めに走っています。日没の境界線はアフリカ大陸を横切っています。この独特の角度は、私たちが普段目にしている地球の地図とは異なる視点を与えてくれます。この写真を通して、地球は巨大で無限なものという従来のイメージから、小さく、繊細で、孤独な惑星という新たな認識が生まれました。

世界への影響：環境運動の象徴

「地球の出」は、ライフ誌が選出した「世界を変えた100枚の写真」の一つに選ばれ、自然写真家のガレン・ローウェルはこれを「史上最も影響力を持った写真」と評しました。この写真は、1972年に撮影された「ブルー・マーブル」と共に、地球に対する人々の認識を大きく変えました。地球環境問題への意識が高まる中で、「地球の出」は、環境運動の象徴として広く用いられ、20世紀で最も広く流通した画像の一つとなりました。地球を保護すべき対象として認識させるきっかけとなったのです。

その他：切手と動画

1969年には、アメリカ郵政公社がアポロ8号を記念した切手を発行し、「地球の出」の写真がそのデザインに採用されました。創世記からの言葉が添えられ、この写真が持つ特別な意味が強調されています。2008年には、日本の月周回衛星「かぐや」が、初めてハイビジョンカメラで「地球の出」の動画撮影に成功しました。

結論：

「地球の出」は、単なる写真ではなく、人類の宇宙への挑戦、そして地球環境問題への意識変容を象徴する歴史的な遺産です。この写真が持つ力と、それが現代社会に与える影響は、これからも長く語り継がれるでしょう。その背景にある、宇宙飛行士たちの努力や、科学技術の進歩、そして写真が持つ力についても、改めて考える機会を与えてくれます。

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