坂の途中の家

坂の途中の家

『坂の途中の家』は、著者の角田光代による小説で、2011年から2013年にかけて『週刊朝日』で連載されました。2016年1月に朝日新聞出版から単行本が出版され、その後同年の12月には文庫版も登場しました。

この物語の中心となるテーマは社会問題である裁判員制度であり、主人公である専業主婦・山咲里沙子の心理的葛藤を描いています。物語は、彼女が乳児虐待死事件の補充裁判員に選ばれるところから始まります。事件の被告は、自身の子供を虐待死させた母親であり、この事件に携わることで里沙子は過去の辛い記憶と向き合わざるを得なくなります。彼女は2歳の娘を育てる母親として、自身の内面に潜む不安や恐れと再び対面することになります。

登場人物

物語には、さまざまな人物が登場します。まず、主人公の山咲里沙子は夫と娘との三人で穏やかな日常を送っていますが、裁判を通じて自らの過去に直面します。彼女の夫、陽一郎は設計事務所に勤める忙しい日常を送っていますが、里沙子や娘のためにもできるだけ早く帰宅しようと努力します。娘の文香はイヤイヤ期真っ最中の2歳で、母親の里沙子にとって手を焼く存在です。

裁判員としての仲間には、同じ裁判での芳賀六実や、被告となる安藤水穂、彼女の夫安藤寿士といった人物がいます。水穂は育児に悩む母親として、周囲の支えを求めるものの、周囲との関係も複雑であることが描かれています。仲間たちや彼女の家族は、それぞれ異なる立場から物語に絡んでおり、感情の交錯が興味を引く要素となっています。

テレビドラマ化

この小説は2019年にWOWOWの「連続ドラマW」でテレビドラマ化されました。原作にはなかった裁判官や他の裁判員たちの個々の事情も描かれ、より深い人間ドラマが展開されます。主演は柴咲コウが務め、彼女は里沙子の複雑な感情を見事に演じました。また、主題歌も柴咲コウがMuseK名義で担当しています。

ドラマは全6話で構成され、視聴者に強い印象を与えました。裁判の裏側にある人々のドラマや心の葛藤を丁寧に描写し、裁判員制度の影響についても考えさせられる内容となっています。

総括

『坂の途中の家』は、角田光代が描く母親の心理描写と社会的問題を融合させた作品であり、読者に深い感動を与える物語です。心の闇や葛藤、愛情の形を探求するこの作品は、単なるサスペンスを超え、家庭や社会について考えさせる力を持っています。

もう一度検索