坂口利雄

坂口利雄は、日本の昭和時代に活動した作詞家であり、歌人、そして教育者でもありました。1910年に生まれ、1979年に70歳でその生涯を閉じています。出身は現在の鹿児島県にあたります。彼の名前は、資料によっては「利夫」と表記されることもあります。

1910年（明治43年）、現在の鹿児島県南さつま市笠沙町片浦にあたる、当時の川辺郡西加世田村で誕生しました。
地元の鹿児島県第一師範学校で教育を受けた後、教職の道に進みます。初期には川辺実科高等女学校などで教鞭を執り、後進の育成に努めました。

この教師として活動していた時期に、歌人としての才覚も現れ始めます。短歌結社『多磨』に作品を寄せるようになり、その投稿を通じて高名な歌人である北原白秋に師事する機会を得ました。白秋の指導のもと歌作に励み、1938年（昭和13年）に出版された『多磨第一歌集』には、彼の詠んだ短歌が4首収められています。

第二次世界大戦が続く困難な時代には、中国大陸へ赴任します。大同の国民学校で教頭として、当地の教育に携わりました。

終戦を迎えると、日本へ帰国します。帰国後、万世町立益山中学校で教務主任として勤務していた時期に、彼の作詞家としての才能が花開きます。鹿児島県と南日本新聞社が共同で開催した県民歌の懸賞募集に応募した作品が、見事に入選を果たしたのです。この歌は広く県民に親しまれることになります。

翌1949年（昭和24年）には、鹿児島県教育委員会の事務局主事へと異動しました。ここでは、県内の教育情報を伝える『教育委員会月報』の創刊に深く関わりました。さらに1951年には、喜入町（現在の鹿児島市の一部）立前之浜小学校へ転任し、校長に就任しています。小学校長として、現場の教育を率いました。

その後、活動の場を兵庫県に移します。兵庫県教育委員会からの招きに応じ、県立神戸聾学校の教諭を経て、県立芦屋高等学校の教諭に至りました。聾学校や高校で、幅広い年代の生徒たちの教育に尽力しました。

定年退職を迎えた後も、教育への情熱は衰えず、滝川高校で教諭として再び教壇に立ちました。しかし、1979年（昭和54年）5月9日、勤務中に急逝されました。享年70歳でした。

主な作品：
坂口利雄が作詞を手がけた主な作品には、以下のようなものがあります。

• - 鹿児島県民の歌（作曲：山田耕筰） - 鹿児島県を代表する歌として広く知られています。
• - 鹿児島県立加世田高等学校校歌（作曲：岡本敏明）
• - 鹿児島市立福平小学校校歌（作曲：武田喜代秀）
• - 南さつま市立長屋小学校校歌（作曲：益田元甫） - こちらの校歌では、「坂口利夫」名義が使用されています。

これらの作品に見られるように、彼は故郷である鹿児島県の学校を中心に、多くの校歌や県民歌の作詞を通じて、地域の文化や教育の発展に貢献しました。歌人として培った感性が、その作詞活動にも生かされたと言えるでしょう。

名前の別表記について：
彼の名前は一般的に「利雄」と表記されますが、特に南さつま市立長屋小学校校歌のように、「利夫」という表記でクレジットされている資料も存在します。これは、同人物であることを示すものと考えられます。

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