坂本幸雄

坂本幸雄の人物像と経歴

坂本幸雄（さかもと ゆきお、1947年9月3日 - 2024年2月14日）は、日本の半導体業界において卓越した経営者であり、UMCJapanおよびエルピーダメモリの社長を歴任した。経営者としての情熱と洞察力で、半導体業界を根本的に変えることに尽力した。彼の物語は、テクノロジーとビジネスが交錯する舞台での挑戦に裏打ちされたものだ。

初期の人生とキャリアのスタート

坂本は群馬県前橋市で生まれ、前橋商業高校を卒業後、日本体育大学に進学し1970年に卒業した。卒業後は野球の指導者を目指したが、教員試験に失敗。そのため、外資系半導体メーカーである日本テキサス・インツルメンツに入社。倉庫での日々からキャリアをスタートさせたが、業務の改善やコスト削減において優れた成果を上げ、1991年には取締役に昇進。さらに1993年には取締役副社長となった。

その後、坂本は神戸製鋼所に移り、半導体本部長として重要な役割を果たす。2000年には日本ファウンドリーの社長に就任し、2002年からはエルピーダメモリの社長を担うこととなる。

エルピーダメモリの挑戦

エルピーダメモリ社長への就任当時、日本の半導体業界は厳しい状況にあり、特にDRAM市場ではサムスン電子などの攻勢により90%以上のシェアを奪われていた。国内では次々に他社がDRAM事業から撤退する中、坂本はエルピーダを立て直すという重大な任務を担った。

彼は、これまでにNECや日立出身者がもっぱら占めていた役員ポストを刷新し、経営方針を再構築。坂本の指導の下、エルピーダメモリは200億円以上の赤字から150億円の黒字へと転換することに成功した。さらに、彼は株式公開を果たし、さまざまな戦略的提携を結ぶことで、世界市場でのシェアを10%を超えるまでに回復させた。

経済危機とその影響

しかし、2008年のリーマンショックによる金融危機はエルピーダにも深刻な影響を及ぼした。円高による収益性の悪化や、経済産業省からの公的資金注入などで辛うじて危機を乗り越えたが、2012年には会社更生法の適用を申請。坂本はこの難局を打破すべく再建プランに取り組んだものの、企業の存続に関する様々な問題が浮上し、株主からの批判を受けることとなった。

新たな挑戦

2015年には、10人の技術者とともにサイノキングテクノロジーを設立し、中国におけるDRAM国産化プロジェクトに参加する計画を立てた。しかし、メンバーの集まりが難航し、プロジェクトは途中で頓挫。それでも、坂本は2019年に中国の紫光集団から高級副総裁に就任し、また日本国内にDRAMの設計拠点を立ち上げる計画が進められていた。2022年には中国の新興DRAMメーカーである昇維旭技術の最高戦略責任者に就任し、新たな道を模索していた。

最期と遺産

坂本幸雄は2024年2月14日、心筋梗塞により76歳で亡くなった。彼の経営哲学と業界への貢献は、半導体ビジネスの歴史において重要な位置を占めており、エルピーダメモリでの経験から多くの教訓が得られた。彼の著書やメディア出演は、次世代の経営者たちにとって貴重な参考材料となっている。坂本の生涯と成果は、多くの人々にとってインスピレーションとなるだろう。

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