坂本忠雄

坂本忠雄（さかもと ただお）は、1935年4月15日に山口県下関市で生まれ、2022年1月29日に心不全のため86歳で亡くなりました。彼は日本の文芸界において重要な役割を果たした人物であり、特に月刊文芸誌『新潮』の編集長としての業績がよく知られています。

経歴

東京都立新宿高校を経て、慶應義塾大学文学部独文学専攻を卒業後、1959年に新潮社に入社しました。1981年から1995年までの14年間、『新潮』の編集長を務め、その間、多くの作家を世に送り出しました。彼の編集長としての手腕は、川端康成、小林秀雄、大岡昇平、安岡章太郎、開高健、石原慎太郎、大江健三郎、江藤淳といった、そうそうたる作家たちの作品に深く関わったことからも明らかです。1989年には、後に文筆家として活躍する中瀬ゆかりが編集部に異動し、坂本の下で編集のノウハウを学んでいます。1998年に新潮社を退社した後も、『三田文学』新人賞選考委員や開高健記念会会長など、文芸界の要職を歴任しました。

坂本忠雄の父は元衆議院議員の坂本実であり、次女の坂本徳子は翻訳家として活躍しています。文芸評論家の福田和也は、自身の著書の中で、坂本が編集長時代に「江藤淳は小林秀雄の舞台を盗んだ」と発言していたことを紹介しており、批評家としての独自性を確立することの重要性を説いていたことが窺えます。

文章指導へのこだわり

坂本は文章指導の厳しさでも知られており、たとえ大家と呼ばれる作家であっても、納得のいく作品になるまで何度も書き直しを命じたそうです。この徹底した姿勢が、彼が担当した作品の質を高める大きな要因となったことは言うまでもありません。

主な著書

『文学の器 現代作家と語る昭和文学の光芒』扶桑社、2009年
『小林秀雄と河上徹太郎』慶應義塾大学出版会、2017年
『昔は面白かったな 回想の文壇交友録』新潮新書、2019年（石原慎太郎との対談）

これらの著書は、坂本が長年培ってきた文学への深い造詣と、文壇における豊富な経験を反映しています。

解説

「〈手記〉小林秀雄と斎藤十一」-『小林秀雄生誕百年記念 「新潮」四月臨時増刊』に収録、新潮社、2002年
野々上慶一 「思い出の小林秀雄」新潮社、2003年。再編解説

関連情報

三田文学
超世代文芸クォリティマガジンエンタクシー

外部リンク

開高健記念会

坂本忠雄は、その生涯を通じて日本の文芸界に多大な貢献をしました。彼の厳格な編集姿勢と文学への深い愛情は、多くの作家に影響を与え、その功績は今後も語り継がれていくことでしょう。

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