坂田藤十郎 (4代目)

四代目 坂田 藤十郎の足跡

四代目坂田藤十郎（本名：中村鴈治郎）は、1931年12月31日、歌舞伎界の名家に生まれる。彼の屋号「山城屋」と定紋は五つ藤重ね星梅鉢で、替紋は向い藤菱である。歌舞伎役者としての地位を確立し、従三位、文化勲章、重要無形文化財保持者として、日本の芸術界に多大な影響を与えてきた。彼は歌舞伎の革新者として名高く、数多くの作品に登場し続けた。

彼の初舞台は、1941年10月に道頓堀角座で行われた『山姥』で、当時は中村扇雀の名で知られた。彼の才能は早くから認められ、1949年には関西実験劇場に参加し、新たな試みが展開された。その後、1953年には『曾根崎心中』 のお初役を演じ、大成功を収める。このお初役は彼の当たり役となり、彼自身が「扇雀ブーム」として名を広げるきっかけとなった。

1955年には松竹を離脱し、阪急電鉄や東宝などの子会社で活動を開始。その後、1957年には東宝専属俳優としてキャリアを拡大、1958年に女優・扇千景と結婚した。1963年に松竹に復帰し、歌舞伎役者としての活動を再開する。

1981年には劇団近松座を創立し、近松門左衛門作品の研究や上方歌舞伎の復興に尽力した。1990年に中村鴈治郎を三代目として襲名し、その名声を確固たるものにした。1994年には人間国宝に認定され、2001年にはロンドンで『曾根崎心中』を上演したことで国際的な評価を受ける。

坂田藤十郎は、数々の上演だけでなく、文化的な意義を持つ作品に多く関わった。彼の演じるお初は、多くの観客の心に深く刻まれ、作品を通じて日本文化の象徴的存在となった。また、彼の演目には、『心中天網島』や『義経千本桜』など、多数の名作が含まれ、特に立役や老役としての活動も評価されている。

坂田藤十郎のプライベートでは、彼の女性関係がしばしばメディアに取り上げられ、知名度のある歌舞伎役者としてのセルフイメージを築く一因ともなった。夫人である扇千景との結婚はできちゃった結婚であり、彼の女性遍歴についても多くの逸話が伝わっている。彼は「男の甲斐性」として女性に対する自由な接し方を許容する姿勢を持っており、これがメディアやファンに注目される要因となった。

2009年に文化勲章を受章し、2011年には日本俳優協会の会長代行に就任。その後、伝統歌舞伎保存会の会長も務め、歌舞伎界の発展に貢献し続けた。2019年には、伝統歌舞伎保存会名誉会長に就任し、2020年に老衰のため88歳で亡くなった。彼の死去により、日本の歌舞伎界は大きな喪失感に包まれた。

坂田藤十郎の遺した功績は決して消えることはなく、彼は歌舞伎の象徴として今もなお多くの人々に愛され続けている。心中や上方歌舞伎を代表する存在無しに日本の演劇は考えられず、彼の影響は次世代の文化人にも色濃く息づいている。

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