坂野常和

坂野常和：証券業界の改革に尽力した実業家

坂野常和（さかの つねかず、1920年6月14日 - 2011年7月10日）は、日本の実業家であり、元日本化薬社長、元大蔵省証券局長を務めました。

家族・親族

坂野常和は、海軍中将である坂野常善を父に持ち、逓信官僚の坂野鉄次郎を叔父に持ちます。また、日本化薬社長・会長を務めた原安三郎を岳父に持ちます。兄弟もまた、それぞれ三菱銀行から日本化学繊維協会の専務理事を務めた坂野常房、清水建設副会長を務めた坂野常隆がいます。

業績

大蔵省時代

坂野常和は、高度経済成長期に大蔵省で証券行政に携わりました。当時、証券会社の営業は自主性に任されていましたが、株取引が一般化するにつれてトラブルが増加。証券会社による強引な勧誘や、顧客から預かった金融債を担保に資金を借り入れる「運用預かり」と呼ばれる行為が横行し、業界全体の経営を悪化させていました。

1962年、坂野は大蔵省理財局証券部証券第二課長に就任すると、すぐに証券会社の新規支店開設を禁止。さらに、1963年には、証券会社の財務健全化を目的とした「坂野通達」を発令しました。この通達では、自己資本に対する負債比率や有価証券保有比率などの制限、運用預かりについては純資産の3倍までとする制限が設けられました。

この通達は、証券業界から猛反発を受け、坂野個人への脅迫にまで発展しました。しかし、一部の業者は通達の必要性を理解し、財務体質の悪い証券会社は手持ち株の処分を余儀なくされました。また、通達直後にアメリカで利子平衡税が実施された影響で株価が暴落し、混乱を招きましたが、最終的には「弾力的に」運用されることとなりました。

日本化薬時代

大蔵省退官後、坂野は日本化薬に入社し、取締役、代表取締役社長、代表取締役会長を歴任。日本化薬の経営者としても手腕を発揮しました。

略歴

1920年（大正9年）：東京・麻布で生まれる
1943年（昭和18年）：高等試験行政科を合格、東京帝国大学法学部政治学科を卒業
1943年（昭和18年）：大蔵省入省、海軍主計見習尉官
1945年（昭和20年）：海軍主計大尉、大蔵省金融局
1946年（昭和21年）：鹿児島税務署長
1953年（昭和28年）：関東信越国税局直税部長
1962年（昭和37年）：大蔵省理財局証券部証券第二課長
1971年（昭和46年）: 大蔵省証券局長
1973年（昭和48年）：大蔵省退官、日本化薬株式会社取締役
1980年（昭和55年）：日本化薬株式会社代表取締役社長
1989年（平成元年）：日本化薬株式会社代表取締役会長
2007年（平成19年）：日本化薬株式会社特別相談役
2011年（平成23年）：肺炎のため死去

業界団体暦・賞罰・他

1976年（昭和51年）：同友クラブ 理事
1978年（昭和53年）：社団法人経済同友会 顧問
1980年（昭和55年）：社団法人日本橋倶楽部 理事
1983年（昭和58年）：デンマーク王国 ヘンリック殿下名誉賞
1984年（昭和59年）：社団法人日本工業倶楽部 理事
1995年（平成7年）：勲二等瑞宝章
その他：雙葉学園後援会四代目会長

まとめ

坂野常和は、大蔵省時代には証券業界の健全化に尽力し、日本化薬では経営者としてその手腕を発揮しました。彼の生涯は、日本の経済発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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