坊城俊民

坊城俊民：古典文学と三島由紀夫との邂逅

坊城俊民（ぼうじょう としたみ、1917年3月29日 - 1990年4月6日）は、昭和期の国文学者、教育者。華族の血筋を受け継ぎ、日本の古典文学研究に情熱を注いだ一方で、作家・三島由紀夫との親交は彼の人生と文学に大きな影響を与えた。

生い立ちと文学への目覚め

東京で堂上華族の嫡男として生まれた坊城は、幼少期から恵まれた環境で育つ。父は伯爵で宮内官を務め、母も子爵の娘という家柄であった。学習院では文芸部で活動し、早くから文才を発揮。校友会誌への寄稿や自伝的小説の発表を通じて、文学への関心を深めていった。特に、中世国文学の研究者・風巻景次郎との出会いは、彼に『源氏物語』の魅力を教え、文学的な方向性を決定づけた。

三島由紀夫との交流

坊城俊民と三島由紀夫の出会いは、学習院高等科時代に遡る。坊城は三島の才能をいち早く見抜き、文学的な交流を深めた。二人は互いに手紙を交わし、文学論を戦わせ、刺激し合った。三島の初期の作品には、坊城の影響が色濃く見られる。しかし、ある恋愛事件をきっかけに、二人の関係には亀裂が生じる。坊城が執筆した小説『舞』を巡り、三島や東文彦らとの間に距離ができてしまう。その後、一時的に関係は冷却化するものの、三島由紀夫が『豊饒の海』を発表した頃に旧交を温め、再び交流するようになった。最晩年の三島は、坊城に宛てた手紙の中で、少年時代の坊城との交流が自身の文学的甘露であったと述懐している。

国文学者、教育者としての足跡

東京帝国大学卒業後、坊城は旧制芝中学校や公立学校の教員として教鞭を執り、後には東京都立池袋商業高校、志村高校の校長を歴任。教育者として多くの人材を育成した。また、古典文学の研究者としても精力的に活動し、『末裔』『焔の幻影 回想三島由紀夫』など、多数の著書を出版。式部職嘱託として歌会始講師を務めるなど、日本の伝統文化の継承にも貢献した。

晩年

1990年4月6日、坊城俊民は生涯を閉じた。彼の残した業績は、国文学研究、教育、そして三島由紀夫との交流を通じて、日本の文学史に深く刻まれている。没後も、作品集や書簡集が出版され、その文学的足跡は今もなお、多くの人々に読み継がれている。

主要著作

『末裔』
『焔の幻影 回想三島由紀夫』
『ふるさとの青春-王朝文学管見-』
『京の翳』
『家家のむすめ達』
『歌會始』
『伝大弐三位註紫式部日記抄』
『みやび-その伝承-』

親族

* 妻：坊城章子（戸田氏秀四女）

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