城多二郎

城多二郎：幻の映画スター、その生涯

城多二郎（しろた じろう、1902年7月 - 1940年代）は、かつて日本の映画界に存在した俳優、そして映画監督です。本名も同じく城田二郎。

生い立ちと青春時代

1902年（明治35年）7月、城多二郎は東京府東京市豊多摩郡千駄ヶ谷町（現在の東京都渋谷区）に生を受けました。出生地はハワイであるという説も存在します。

幼少期にはアメリカへ渡り、ハワイのヒロ・ボーディング・スクール（現在は閉校）で学びました。帰国後、慶應義塾大学に進学。身長173cm、体重67.5kgという恵まれた体格を生かし、水泳と柔道で才能を発揮し、スポーツマンとして名を馳せました。特に三田や銀座界隈では「ジロマン」または「二郎まん」という愛称（あるいは、恐れられた渾名）で知られていたようです。

松竹蒲田撮影所での俳優時代

大学卒業後、一旦は実業の世界へ。帝國生命保險會社（現在の朝日生命保険）大阪支社に勤務していました。しかし、1931年（昭和6年）9月、鈴木傳明をはじめとするスター俳優たちが松竹を退社し、不二映画社を設立する動きの中、同年10月1日、城多は近藤伊与吉の誘いを受け、松竹蒲田撮影所に電撃入社します。

同年10月31日公開の清水宏監督作品『青春図会』で映画デビュー。二枚目俳優として、『春は御婦人から』（小津安二郎監督）、『陽気なお嬢さん』（重宗務監督）といった作品で主演を務めます。しかし、演技力は未熟だったためか、人気は伸び悩み、同時期に入社した江川宇礼雄らに後れを取ることとなります。

当時の資料によれば、城多は東京市芝区高輪南町に居住し、コーヒーを愛飲していたようです。また、1932年（昭和7年）のロサンゼルスオリンピックを見学したという記録も残っています。

映画監督への転身、そして謎に包まれた晩年

1935年（昭和9年）11月7日公開の『大学の赤ん坊』を最後に松竹蒲田を退社。フリーランスとなり、重宗務が設立した東京発声映画に所属しますが、翌1936年（昭和11年）には俳優を廃業し、映画監督へと転身します。

同年9月18日公開の『戦線に吠ゆ』には、俳優として出演しています。しかし、以降の出演作品はなく、その後の消息は不明とされていました。

しかし、1958年（昭和33年）発行の雑誌『新文明』には、日中戦争勃発後、南支派遣軍報道部対支宣伝班に従軍し広東省へ赴任。任務中にコレラに罹患し、上海で急逝したという記述があります。もしこれが事実であれば、彼の没年は不詳ということになります。

城多二郎は、映画史の片隅に忘れ去られた存在でしたが、近年、その生涯が再び注目を集めています。短命に終わった俳優時代、そして謎に包まれた晩年。彼の足跡を辿ることは、昭和初期の映画界、そして日本の歴史を垣間見ることにも繋がるのかもしれません。

主な出演作品

『青春図会』(1931年)
『春は御婦人から』(1932年)
『満州行進曲』(1932年)
『陸軍大行進』(1932年)
『肉弾相搏つ』(1932年)
『陽気なお嬢さん』(1932年)
『海の王者』(1932年)
『太陽は東より』(1932年)
『前衛装甲列車』(1933年)
『孔雀船』(1933年)
『晴曇』(1933年)
『結婚街道』(1933年)
『理想の良人』(1933年)
『光輝満洲国』(1934年)
『都会の感傷』(1934年)
『永久の愛 前篇/後篇』(1935年)
『大学の赤ん坊』(1935年)
『戦線に吠ゆ』(1936年)

外部リンク

城多二郎 - 日本映画データベース
城多二郎 - KINENOTE

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