春は御婦人から

映画『春は御婦人から』について

『春は御婦人から』（はるはごふじんから）は、日本の映画史に名を刻む作品であり、1932年1月29日に松竹キネマの制作により公開されました。この映画は、著名な映画監督・小津安二郎によって監督され、モノクロのスタンダードフォーマットで製作されています。上映時間は74分で、サイレント映画として発表されました。

制作背景

作品の制作は1931年の11月から始まりましたが、当初の予定されていた作品『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』の撮影が、子役の怪我により途切れてしまいました。この間、新たに新人俳優の城多二郎を起用し、1931年の12月から翌1932年の1月にかけて撮影が行われました。しかし、残念ながら、現在残っているのは脚本のみで、映像やネガティブは失われており、その作品を観ることはできません。

あらすじ

物語は、学生の加藤を中心に展開します。加藤は洋服屋の坂口から借金の支払いを迫られ、恋人のまさ子が働く喫茶店に彼女を残したまま逃げます。坂口に見つかると、加藤は試験の身代わりを頼まれ、代金を支払うことを提案します。しかし、坂口は試験において完全に失敗してしまいます。加藤は期待が裏切られたものの、喫茶店で恋人と過ごす日々が続くことを考え、元気を取り戻します。

また、加藤の友人である吉田も同様に坂口に借金があり、坂口の妹・美代子に出会います。坂口は吉田に就職先を斡旋するものの、またもや借金は返済されず、吉田はやけくそで道行く学生たちに請求書を差し出す事態に陥ります。

ラストシーン

物語のクライマックスでは、「春はご婦人から、借金はまず後回し」という皮肉な字幕で終了します。この一文は、春という明るいイメージと、借金という重苦しい現実を対比させることで、登場人物たちの人生の皮肉さを浮かび上がらせています。

スタッフとキャスト

映画の監督を務めた小津安二郎は、その後の日本映画界に多大な影響を与えた監督として知られています。脚本は池田忠雄と柳井隆雄が担当し、原案は小津安二郎自身が手がけました。また、撮影は茂原英雄が担当しました。主なキャストには、主人公の吉田役を含む城多二郎、加藤役の斎藤達雄、坂口の妹美代子を演じた井上雪子、まさ子役の泉博子、洋服店主の坂口を演じた阪本武、岡崎商事会社の社長を演じた谷麗光が名を連ねています。

結論

『春は御婦人から』は、小津安二郎の独特の視点が光る作品であり、恋愛と借金というテーマを通じて人間の心情を描いています。現存する記録の中で、忘れられた名作は今なお多くの人々に影響を与え続けているのです。

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