城戸知正

城戸知正（きど ともまさ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。その生涯は、激動の時代を背景に、主君への忠誠と、一族の未来を案じる姿が色濃く描かれています。

はじめ、知正は筥崎座主麟清（大友宗麟の従兄弟）に仕えていました。しかし、その能力を見込まれ、大友氏の重臣である立花道雪の与力として派遣されることになります。知正は肥前・筑後における「耳聞（じもん）」、すなわち情報収集役として、その才能をいかんなく発揮しました。戦国時代において、情報は戦の勝敗を左右する重要な要素であり、知正の活躍は立花道雪にとって、非常に頼りになるものでした。

知正は、道雪の後妻の仲介を取り持ったことが縁で、道雪の娘である立花誾千代（ぎんちよ）の傅役（教育係）を務めることになりました。誾千代は、その勇猛さと美しさで知られる女性であり、知正は彼女の成長を支える重要な役割を担いました。その後、道雪の後妻の連れ子である亀菊丸（後の安武方清）が筥崎座主の後継者に決まると、知正はその見後見人となりました。これは、知正が単なる武将としてだけでなく、高い信頼と人望を集めていた証拠と言えるでしょう。

島津氏が筑前へ侵攻した際、道雪は立花城に篭城する命令を下しました。この時、知正は方清が率いる箱崎党400余名の兵が立花山城に籠城した際、手兵百余名をもって箱崎松原口を守護しました。この戦いにおける知正の勇敢な行動は、その武将としての能力の高さを物語っています。天正15年（1587年）、豊臣秀吉により、道雪の養子である立花宗茂が柳川城を与えられた際、知正は小野鎮幸とともに、その城の受け取りの任にあたりました。これは、知正が立花家において、重要な役割を果たしていたことを示す出来事です。

天正19年頃、知正は家督を長男である清種に譲り、隠居しました。しかし、その血筋は途絶えることなく、子孫は柳川藩士として続き、その名前は「享保八年藩士系図、上」にも「城戸甚太夫種定」として記されています。これは、知正の血筋が、その後の時代にもしっかりと受け継がれていったことを意味しています。このように、城戸知正は、戦国時代から江戸時代初期にかけて、武将として、また教育者として、多岐にわたる分野で活躍しました。彼の生涯は、戦国時代の武将の生き様を今に伝える貴重な記録と言えるでしょう。

参考文献として、以下の資料があげられます。
筑前博多史料豊前覚書　城戸清種著、川添 昭二校訂、文献出版、昭55
『柳川歴史資料集成第二集 柳河藩享保八年藩士系図・上』 柳川市史編集委員会編・ 福岡県柳川市 1996年（平成8年）発行

これらの資料から、城戸知正の生涯とその一族について、より深く知ることができます。

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