埴生護国八幡宮

埴生護国八幡宮

富山県小矢部市に位置する埴生護国八幡宮（はにゅう ごこく はちまんぐう）は、古くからこの地に鎮座する八幡信仰の神社です。

由緒と歴史

当社の創建に関する正確な年代は判然としませんが、古くからの伝承によれば養老2年（718年）に遡るとされています。一方、平安時代末期の歴史を記した『吾妻鏡』や『吉記』といった文献には、入道源三位卿こと源頼政と縁の深い埴生弥太郎盛兼が、養和元年（1181年）に平家方の追討を受けて自害したとの記録が見られます。この記録から、摂津源氏の近親にあたる埴生氏が、京都に近い山城国から越中国の埴生の地へ八幡神を勧請したのではないか、という説が唱えられています。

特に有名なのが、源平合戦における木曾義仲との関わりです。『源平盛衰記』によれば、寿永2年（1183年）5月、源氏と平氏が激突した倶利伽羅峠の戦いに臨むにあたり、木曾義仲が当神社で戦勝を祈願したと伝えられています。義仲はこの戦いで見事勝利を収め、その後の源平の趨勢に大きな影響を与えました。この故事以来、当社は武将たちからの篤い崇敬を集めるようになります。戦国時代から江戸時代にかけて、前田利長や佐々成政といった有力な武将たちが社領を寄進しており、彼らの信仰の深さを物語っています。

境内と文化財

境内には、歴史の深みを感じさせる様々なものが残されています。社宝としては、木曾義仲が倶利伽羅峠での戦勝を祈願した際の祈願書や、武田信玄が奉納したとされる書状などが伝えられています。また、境内の入り口には、倶利伽羅峠の戦いにおける義仲の雄姿を偲ばせる騎馬像が建立されています。その近くには、源氏軍が鳩の導きによって発見したという言い伝えを持つ名水「鳩清水（はとしみず）」が今もこんこんと湧き出ており、参拝者の喉を潤しています。さらに、かつてこの地にあった蓮沼城の城主であった遊佐慶親によって寄進されたという石段もあり、歴史の積み重ねを感じさせます。

当社の社殿は、その歴史的価値と建築美から、国の重要文化財に指定されています。現存する主要な建造物には、慶長5年（1600年）に建立された本殿、そして正保3年（1646年）に建立された釣殿、拝殿及び幣殿があります。これらの建物は、江戸時代初期における神社建築の様式を今に伝え、貴重な文化遺産となっています。

埴生護国八幡宮は、創建以来の長い歴史の中で、地域の守護神として、また歴史上の重要な出来事の舞台として、多くの人々の信仰を集めてきました。特に源平合戦における木曾義仲との関わりや、武将たちの崇敬、そして国の重要文化財に指定された社殿など、見どころが多く、歴史と文化を感じられる古社です。

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