堀内正和

堀内正和：日本の抽象彫刻を牽引した巨匠

堀内正和（1911年～2001年）は、20世紀を代表する日本の彫刻家であり、特に抽象彫刻における先駆者としてその名を知られています。京都で生まれ育った彼は、幼少期から類まれな才能を発揮し、独創的な抽象彫刻作品を制作し続けました。

若き日の才能と教育への道

幼少期から抽象彫刻への強い興味を示していた堀内は、独学で研鑽を積み、1929年には第16回二科展に入選するという快挙を成し遂げます。この成功は彼の人生に大きな転機をもたらし、当時通っていた東京高等工芸学校を中退。その後は、青山学院大学やアテネ・フランセで彫刻の指導にあたり、教育者としての道を歩み始めます。

戦時下の葛藤と国際的な評価

一方、彫刻家としての活動においては、藤川勇造に師事するなど研鑽を積んでいました。しかし、第二次世界大戦中は、戦時体制への批判を表明したことから制作活動は一時中断を余儀なくされます。それでも、彼は彫刻への情熱を失わず、戦後、再び制作活動を再開します。

アテネ・フランセに通いながらフランス語、ラテン語、ギリシャ語を習得し、古代ギリシャ・ローマ彫刻から東洋彫刻まで、幅広い視点で彫刻を研究。西洋と東洋の美術を深く理解し、その知見を自身の作品に反映させていきました。

戦後の1947年には二科会会員に推挙され、1950年には辻晋堂の誘いを受けて京都市立美術専門学校に赴任。教育者として、日本の彫刻界に抽象美術の概念を根付かせようと尽力しました。

彼の鉄を用いた溶接による抽象彫刻は、国内外で高い評価を受け、1957年のサンパウロ・ビエンナーレへの出品をきっかけに、国際的な名声を確立しました。その後もインドのトリエンナーレなど、数々の国際展に出品し、世界的な彫刻家としての地位を確固たるものにしていきます。

晩年と幾何学への傾倒

晩年には、立方体や直方体をモチーフにした幾何学的な作品へと制作スタイルを移行。独自の世界観を構築し、数々の賞を受賞しました。1966年に二科会を退会、1974年に京都市立美術専門学校を退職した後も、精力的に制作を続けました。

没後もその作品は高く評価されており、2018年には神奈川県立近代美術館で彼の回顧展が開催されるなど、現在もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

受賞歴

高村光太郎賞（1963年）
第1回現代国際彫刻展大賞（1969年）
第3回長野市野外彫刻賞（1975年）
第28回毎日芸術賞（1987年）

代表作

『首』：二科展入選作品
『海の風』：高村光太郎賞受賞作品
『立方体の二等分』：現代国際彫刻展大賞受賞作品
『鳩』：仏像とオリエントの女神を融合させた独特の作品

著作

堀内正和は、彫刻家としてだけでなく、美術評論家としても活躍し、数々の著作を残しています。彼の著作は、彼の深い造形力と美術への鋭い洞察力を示すものであり、後世の彫刻家や美術愛好家にとって貴重な資料となっています。

堀内正和は、日本の近代彫刻史に大きな足跡を残した、重要な彫刻家でした。彼の作品は、今もなお、多くの人々に感動と興奮を与え続けています。

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