神奈川県立近代美術館

神奈川県立近代美術館：歴史と建築、そして現代

神奈川県立近代美術館は、日本における公立近代美術館の草分け的存在です。1951年、鎌倉市の鶴岡八幡宮の境内に開館しました。著名な建築家、坂倉準三氏設計によるその建物は、近代建築の傑作として高く評価され、20世紀の日本の建築史に大きな足跡を残しています。開館当初は所蔵作品ゼロからのスタートでしたが、長年に渡る収集活動により、2016年時点で約14,000点もの作品を擁するまでに成長しました。

鎌倉館：歴史と閉館、そして再生

1951年の開館以来、鎌倉館は多くの来館者で賑わい、数々の展覧会を開催してきました。セザンヌやルノワールといった巨匠の作品を展示した開館記念展を皮切りに、近代美術を広く紹介する役割を担ってきました。しかし、建物の老朽化や耐震性の問題、土地所有者である鶴岡八幡宮との借地契約満了という現実的な問題から、2016年3月末に閉館という決断が下されました。

閉館にあたり、美術館は「鎌倉からはじまった。1951-2016」展を開催し、半世紀以上に渡る歴史に幕を閉じました。建物の建築学的価値を考慮し、保存を願う声が上がりましたが、耐震補強工事には多額の費用が必要でした。結果、建物は鶴岡八幡宮に無償譲渡され、大規模な改修を経て、2019年6月、「鎌倉文華館鶴岡ミュージアム」として再オープンしました。この新たな施設では、鎌倉の歴史と文化を紹介する展示も行われています。

葉山館と鎌倉別館：新たな拠点

鎌倉館閉館後、神奈川県立近代美術館は、葉山館と鎌倉別館の2館体制に移行しました。葉山館は、高松宮家別邸を改修した施設で、2003年に開館しました。海岸沿いの立地を生かし、自然光や風景を取り入れた実験的な空間が特徴です。主に企画展を開催し、現代美術の動向を積極的に発信しています。

一方、鎌倉別館は1984年に開館し、大高正人氏設計の建物です。主に常設展を開催し、美術館の所蔵作品を幅広く紹介する役割を担っています。

建築的特徴：旧鎌倉館

旧鎌倉館の建物は、その建築デザインにおいても高く評価されています。坂倉準三氏の設計による建築様式は、時代の先端をいく革新的なものでした。開館当初は、濃茶色や濃緑色、黄色などの鮮やかな色彩が用いられ、前庭では野外彫刻展も開催されました。1991年の大規模改修を経て、外観は白を基調としたものへと変化しました。内部も、自然採光から人工照明へと変更されるなど、時代の変化に合わせて改修が重ねられてきました。現在では国の重要文化財に指定され、その歴史的・建築的価値が広く認識されています。

過去の出来事

2014年には、美術館が所蔵していた棟方志功の版画作品がカラーコピーであることが判明する事件がありました。真作は現在も行方不明で、美術界に衝撃を与えました。

人材：美術館を支えた人々

神奈川県立近代美術館の歩みには、多くの学芸員や館長といった人材の貢献が不可欠でした。土方定一氏、酒井忠康氏、山梨俊夫氏、水沢勉氏、そして長門佐季氏など、多くの優れた専門家が美術館の運営、コレクション形成、展覧会企画に携わり、今日の神奈川県立近代美術館を築き上げてきました。

まとめ

神奈川県立近代美術館は、その歴史、建築、そしてコレクションを通して、日本の近代美術、そして建築史を語る上で欠かせない存在です。鎌倉館の閉館と再オープンという歴史的転換期を経て、葉山館と鎌倉別館で新たな時代へと歩みを進めています。今後も、現代美術の発信基地として、そして日本の文化遺産として、その役割を担い続けることでしょう。

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