堀江航

堀江 航（ほりえ わたる）

1979年5月25日、東京都で生まれた堀江航は、元プロ車いすバスケットボール選手として国内外で輝かしい実績を残し、その後パラアイスホッケー日本代表として平昌パラリンピックにも出場した、類まれなるアスリートであり指導者、そしてパブリックスピーカーです。身長179cm、体重75kg。

日本体育大学を卒業後、アメリカのイリノイ州立大学大学院で体育学・教育学の修士号を取得。在学中には学業優秀選手賞にも輝いています。現在は日本体育大学大学院博士後期課程に在学し、更なる研鑽を積んでいます。

多彩なキャリアと競技遍歴

幼い頃からサッカーに情熱を傾け、名門クラブの三菱養和で技術を磨きました。都立駒場高等学校では、学校史上初めて全国高校サッカー選手権への出場を果たしています。この高校には、後に妻となる高畑百合子氏（TBSアナウンサー）や、お笑いコンビ「しずる」の村上純氏が一学年後輩として在籍していました。

しかし、日本体育大学在学中の3年生時にバイク事故で左足下腿を切断する重傷を負います。この出来事が、彼を車いすバスケットボールとの出会いへと導きました。2005年には車いすバスケットボールの強豪であるイリノイ大学への留学を果たし、2009-2010シーズンにはチームの全米大学選手権優勝に大きく貢献しました。また、車椅子ソフトボールにおいても、ワールドシリーズで最優秀選手（MVP）に輝くなど、その才能は多岐にわたります。

イリノイ大学やシカゴ周辺地域で車いすバスケットボールの指導に携わり、多くのクリニックやキャンプでコーチを務めるなど、指導者としても経験を積みました。日本でもNPO法人のキャンプに講師として招かれています。

プロとしての活躍

大学卒業後、堀江氏は日本人として初めてスペインのプロバスケットボールリーグでプレーし、プロアスリートとしてのキャリアをスタートさせました。さらに、同じく日本人として初めてドイツの強豪チーム、RSV Lahn-Dillへ移籍。ここではドイツ国内リーグとカップ戦の二冠に加え、ヨーロッパチャンピオンズカップでも優勝を果たし、前人未到の三冠達成に貢献しました。かつて愛用していたBEAMSがスポンサーとしてサポートについたことは、本人にとっても大きな喜びでした。海外での経験を通じて培った独自の感性を活かし、帰国後は日本各地で革新的な活動や講演を行っています。

新たな挑戦：アイススレッジホッケー、そしてブラジリアン柔術

2012年に車いすバスケットボール選手としてのキャリアに区切りをつけ、新たな挑戦としてアイススレッジホッケー（現在のパラアイスホッケー）を開始すると、その才能はすぐに認められ、短期間で日本代表メンバーに選出される快挙を成し遂げました。2014年のソチ・パラリンピック出場を目指し、懸命な努力を続けました。2013年にはアイススレッジホッケー日本代表として世界選手権Bプールに出場し、見事銀メダルを獲得。ソチ・パラリンピックの最終予選にも臨みましたが、惜しくも本大会出場は叶いませんでした。しかし、最終戦では卓越したプレーでゲームMVPに選ばれています。

一度は2015年の世界選手権Aプール出場（8位）を最後に日本代表を引退しましたが、2017年に再び代表復帰を決意。「長州や大仁田もすぐに引退を撤回している」と、プロレスラーの例を引き合いに出しながらその理由を語り、再び世界の舞台を目指し始めました。スウェーデンで開催された平昌パラリンピック最終予選では、ディフェンスながら5ゴール7アシストという驚異的な活躍を見せ、ベストDFプレーヤーに選出されると共に、チームのパラリンピック出場権獲得に大きく貢献しました。最終予選の初戦では、尊敬するチームメイトの三澤英司選手が開始早々に負傷退場するアクシデントがありましたが、「英司さんを絶対に本大会に連れて行く」という強い思いが、堀江選手の鬼気迫るプレーを後押ししたと言われています。

そして2018年、平昌パラリンピックに出場。チームは「予想通り」と本人が振り返る通り、5戦全敗という結果に終わりましたが、イタリア戦で挙げたゴールは大会のハイライトの一つとなりました。パラリンピック期間中は、IPC（国際パラリンピック委員会）公認のサムソンブロガーとして選手村での様子をYouTubeで発信し、Most Creative賞を受賞するなど、情報発信の分野でも才能を発揮しました。

パラアスリートとしての活動と並行してブラジリアン柔術の練習にも励み、積極的に大会に出場しています。健常者との試合にも臨み、「とにかく楽しくてしょうがない」と語るほど、その魅了に惹きつけられています。2021年12月には、ブラジリアン柔術で最高位である黒帯を取得しました。現在はブラジリアン柔術道場『CARPEDIEM世田谷』の代表も務めています。

多角的な活動

車椅子ソフトボールの普及活動にも力を入れ、伝道師として日本国内での普及を進めました。自ら日本代表チームを結成しアメリカ選手権へ参加したり、プロ野球チームの埼玉西武ライオンズからの協力を得て、日本プロ野球界史上初となる車椅子ソフトボールチームを結成し、その代表を務めるなど、新たな試みにも積極的に取り組んでいます。その類稀な才能から、様々な競技から誘いを受けることも多く、「誘われればなんでもやる」と本人が語るように、未知の領域にも積極的に挑戦する姿勢を持ちます。

2016年には、テレビドラマ『君に捧げるエンブレム』の車いすバスケットボールシーンにおいて、総合監修を務めるなど、メディアを通じての活動も行いました。また、GLAYのシングル「運命論」のプロモーションビデオや、宝くじ「ビンゴ5」のCMにも出演しています。

2019年には東京パラリンピックを目指し、パラカヌーへの新たな挑戦を開始。寒さ厳しい真冬の落水も恐れず、目標に向かって突き進みました。

プライベートと現在

2019年2月19日、高校時代の後輩であったTBSアナウンサーの高畑百合子氏と結婚。この慶事は、パラリンピアンとしては異例のYahoo!ニュースのトップトピックとして報じられ、大きな注目を集めました。2021年11月には第一子となる男児が誕生し、2023年6月には第二子となる女児が誕生し、二児の父となりました。2022年1月には新型コロナウイルス感染症に罹患しています。

趣味はサッカーやプロレス、格闘技などのスポーツ観戦。食に関しては特にこだわりはないそうですが、野菜全般が苦手でほとんど食べないと言います。好きなテレビ番組に「おねだり!!マスカット」を挙げる一面も持つ他、音楽ではMr.Childrenをこよなく愛する熱狂的なファンです。

2023年からは、自身3度目となるパラアイスホッケー日本代表への復帰を果たしました。今度はフィールドプレイヤーからゴールキーパーへとポジションを変更し、二度目のパラリンピック出場を目指し、新たな境地で挑戦を続けています。多岐にわたる競技経験と指導者としての視点を活かし、パラスポーツの振興や社会への積極的なメッセージ発信を続けています。

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