堀真理子

堀真理子

概要

堀真理子（ほり まりこ）氏は、1956年に東京で生まれた日本の英米文学者です。長年にわたり教育・研究活動に従事し、現在は青山学院大学の教授として教鞭をとっています。特にアイルランドの劇作家サミュエル・ベケットの研究で知られています。

経歴

堀氏は、青山学院大学文学部英米文学科で学士課程を修了した後、同大学大学院文学研究科英米文学専攻の博士課程にて単位を取得し退学しました。さらに、演劇への深い関心からロンドン大学演劇学科で学び、M.A.の学位を取得しています。

教育者としてのキャリアは、1986年に青山学院大学経済学部の専任講師として始まりました。その後、1990年には助教授に昇進し、1997年からは教授として、同大学で多くの学生の指導にあたっています。長きにわたり、青山学院大学を拠点として研究と教育に貢献してきました。

研究と業績

堀氏の研究は英米文学、特に20世紀のモダニズム演劇やアイルランド文学に重点を置いています。サミュエル・ベケットの作品に関する研究は特に高く評価されており、その代表的な成果の一つが『ベケット巡礼』（三省堂、2007年）です。

また、2017年に刊行された単著『改訂を重ねる『ゴドーを待ちながら』 演出家としてのベケット』（藤原書店）では、ベケット自身が演劇作品、特に有名な『ゴドーを待ちながら』に対して行った改訂や演出への関与を詳細に分析し、ベケットの多面的な創作姿勢に光を当てました。この著作は、その学術的価値と洞察の深さから、2018年に吉田秀和賞を受賞しました。これは、単なる文学研究に留まらず、演出論や演劇実践との関わりを探求した点が評価されたものです。

共編著にも多数参加しており、その研究テーマの幅広さを示しています。例えば、『概説アメリカ文化史』（ミネルヴァ書房、2002年、笹田直人、外岡尚美と共編著）ではアメリカ文化全般に対する視点を提示しています。また、『ギリシア劇と能の再生 声と身体の諸相』（水声社、2009年、青山学院大学総合研究所叢書、佐藤亨他7名と共著）や、『戦争・詩的想像力・倫理 アイルランド内戦、核戦争、北アイルランド紛争、イラク戦争』（水声社、2016年、青山学院大学総合研究所叢書、伊達直之、佐藤亨、外岡尚美と共著）では、演劇、文化、歴史、倫理といった複数の分野を横断する探求を行っています。これらの共同研究からは、文学を多角的な視点から捉えようとする堀氏の研究姿勢がうかがえます。

さらに、海外の重要な研究書の翻訳も手がけています。ゲイル・オースティンによる『フェミニズムと演劇 その理論と実践』（明石書店、1996年、原恵理子と共訳）では、演劇におけるジェンダー論の導入に貢献しました。ロバート・ペン・ウォレンの『南北戦争の遺産』（本の友社、1997年、アメリカ文学ライブラリー、田中啓史と共訳）では、アメリカ文学における歴史認識の問題に取り組んでいます。

これらの業績は、堀氏が英米文学研究、特に演劇や文化史、倫理といった広範な分野において、深い洞察力と学際的なアプローチをもって貢献してきたことを示しています。青山学院大学の教授として、後進の指導にも力を注ぎながら、現在も活発な研究活動を続けています。

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