堂之上遺跡

堂之上遺跡は、岐阜県高山市久々野町久々野に位置する縄文時代の集落遺跡です。飛騨川と八尺川の合流点に形成された舌状台地に広がっており、その歴史的価値から国の史跡として指定されています。

遺跡の存在は明治時代から知られていましたが、本格的な調査が行われたのは1972年（昭和47年）に久々野中学校郷土クラブが遺構を発見したことがきっかけでした。翌年には中学校建設に伴う緊急調査が実施され、その後1979年（昭和54年）まで継続的な発掘調査が行われました。これらの調査により、縄文時代前期中葉から縄文時代中期末葉にかけての集落跡であることが判明しました。

遺跡の中心部には土壙墓が確認され、台地の縁辺部にはコの字型に配置された竪穴建物跡が見られます。確認された建物跡は、縄文時代前期のものが9軒、中期のものが34軒、合計43軒にのぼります。建物の建材にはクリが使用されており、その形態は時代によって変遷が見られます。前期中葉の建物は、中央に地床炉を持つ4本柱の方形建物で、周囲には周溝が設けられています。この形式は信州地方の文化の影響を受けていると考えられています。前期後葉になると、円形の建物が現れ、その他にも小判型、五角形、楕円形など多様な形状の建物が見られるようになります。また、地床炉も複式炉へと変化し、北陸や関西地方からの影響が示唆されています。

出土品としては、有舌尖頭器や石棒のほか、早期の押型文土器、北陸地方に見られる葉脈状文土器などがあります。興味深いことに、瀬戸内地方や関東地方に由来する出土品も見つかっています。建物の変遷と同様に、出土品にも信州地方（神之木式土器など）の影響から、北陸・関西地方（里木Ⅱ式など）の影響へと変化する傾向が見られ、この地域が時代ごとに様々な地域からの影響を受けていたことがわかります。

堂之上遺跡は、1980年（昭和55年）3月24日に国の史跡に指定され、1982年（昭和57年）にかけて史跡公園として整備されました。出土品は隣接する久々野歴史民俗資料館で展示されており、一般公開されています。縄文時代の集落の様子を知ることができる貴重な遺跡として、多くの人々が訪れています。

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