堤宝山流

堤宝山流（つつみほうざんりゅう）

堤宝山流は、日本の古武道の一派として、組討ち、柔術、剣術を総括した武道です。この流派は室町時代に創設され、流祖は小具足の達人、堤宝山です。堤は、念阿弥慈恩の14人の弟子の一人として知られ、刀や槍、そして鎧組における技術を習得しました。日本剣道史研究家の森田栄によると、堤は14世紀の建徳年間に活躍していたとされています。

堤宝山は、慈恩から印可を受けた後、下野国芳賀郡の守護に任じられ、技術を整理し流派を興しました。その基盤となるのは、敵の甲冑を打ち砕く「乾坤一擲」の技法であり、これを「てつ丸の位」と称されます。古流組討ちの特徴として、右手指を多用しつつ、無手ではない技法を多く取り入れています。

技術と流派の特徴

『堤宝山流武藤虎之助伝書』には、敵の攻撃に対し前後左右に対応するための投げ技が詳細に記されています。また、鎖鎌や二刀、棒術に対する防御技法として「野中の幕」が存在し、これは柳生新陰流においても使用される盾となる技として言及されています。さらに、流派の歌伝には、堤が僧侶を教師としていたことが記されています。これは、武道と仏法の深い関係を示唆しています。明治時代には、警視流木太刀形において「八天切」が採用され、堤宝山流の技術は新たな世代へと引き継がれました。

富江藩における堤宝山流

江戸時代、富江藩（現在の長崎県五島市富江町）においても堤宝山流は学ばれていました。大河内亀右衛門がこの流派を広めましたが、皆伝の門弟はいなかったため、近藤平太郎が教授を行っていました。富江藩の士たちは、江戸での参勤交代の際に小田金右衛門から免許皆伝を授かり、その後、平田藤平が師範となりました。その他にも、中村順蔵や隅田惣右衛門といった門弟がました。

藩主が文武を奨励した際、平田は師範に選ばれ、子弟の育成に尽力しました。そこからさらに多くの弟子たちが免許皆伝を取得しました。明治時代に入ると、元家士たちの協力で道場が設立され、昭和10年頃まで護身術として盛んに指導が行われました。

バラエティに富む技術体系には、表裏48手や5つの秘技が存在し、伝位は裏目録、応変、中伝、免歌、免許、免許皆伝の6段階に分かれています。5つの秘技の名称には、いずれも一撃必殺の意味が込められており、特定の階級に到達した者にのみ教えられることが厳格に守られていました。堤宝山流の伝承は、近藤勝平を最後に途絶えたものの、1957年に大分合同新聞などに取り上げられた活動が存在します。

現在の伝承と系統

堤宝山流には2つの主要な系統が存在します。月岡助左衛門が伝えた月岡系と、武藤家が継承した武藤系です。月岡系では、特に「堤宝山流和合」について記されています。

居相の技術では、柄取や大小柄取、片手取、両手取、そして独自の捕手技が名称として挙げられます。理論が体系化されており、技法の幅が広いことが特徴です。

武藤系では、居業と立相からなる形があり、技に裏や変化が加えられたものが多く、また急所に対する「中利」という技術も口伝で受け継がれています。

堤宝山流は、歴史的背景や技術の多様性、そして深い文化的背景を持つ日本の武道として、今後もその技術と理念が受け継がれていくことが期待されます。

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