警視流

警視流（けいしりゅう）

警視流は、明治10年代に東京の警視庁で確立された武術の形態です。この武術は、木太刀形（撃剣形）や立居合、捕縄術、さらには活法といった柔術の要素を含む「警視拳法」としても知られています。ただし、現代の警視庁では木太刀形と立居合のみに特化して伝承されています。

制定の経緯

明治10年（1877年）、西南戦争における警視隊抜刀隊の活躍が剣術の重要性を再認識させました。この出来事を受けて、大警視・川路利良は『撃剣再興論』を発表し、警察内部での剣術の啓発を促す意図を示しました。明治12年（1879年）には巡査教習所に道場が設立され、桃井春蔵や榊原鍵吉らの審査の後、初代の撃剣世話掛として梶川義正や上田馬之助が任命されました。

その後も多数の実力派剣客が世話掛に加わり、各流派から選りすぐられた技を統合することで「警視庁流」が創造されました。この流派の発表は明治19年（1886年）の弥生祭武術大会で行われました。

警視流は洋装帯剣を身につけた警察官に適するように工夫されており、伝承されている形には異なる動作が見られることが特徴です。

警視流木太刀形

警視流木太刀形は、日本の10の剣術流派から1本ずつ技が取り入れられ、構成されています。多くの流派を融合した点で、日本の剣道形の先駆けとも言えるでしょう。戦前には剣道教本に掲載され、現在も警視庁内の剣道家たちによって受け継がれています。技の中には、日本剣道形にはない脛斬りへの返しや肘打ちが含まれ、礼法や木太刀に関しては伝統的な形式が色濃く残っています。

木太刀は全長約1メートル、刃長は約73センチの仕様で、様々な剣術流派から選ばれた10本の技が存在しています。

技の一例：
1. 八相（はっそう）- 直心影流
2. 変化（へんか）- 鞍馬流
3. 八天切（はってんぎり）- 堤宝山流
4. 巻落（まきおとし）- 立身流
5. 下段の突（げだんのつき）- 北辰一刀流
6. 阿吽（あうん）- 浅山一伝流
7. 一二の太刀（いちにのたち）- 示現流
8. 打落（うちおとし）- 神道無念流
9. 破折（はおれ）- 柳生流
10. 位詰（くらいづめ）- 鏡心明智流

警視流立居合

警視流立居合は、5つの流派から選ばれた技で構成され、すべて立った状態で行う技術が用いられています。現代でも警視庁内の道場で受け継がれており、一部の民間道場でも学ぶことができます。技に関しては:
1. 前腰（まえごし）- 浅山一伝流
2. 無双返し（むそうがえし）- 神道無念流
3. 回り掛け（まわりがけ）- 田宮流
4. 右の敵（みぎのてき）- 鏡心明智流
5. 四方（しほう）- 立身流

警視拳法の柔術

柔術も警視流の一つとして存在し、特に16本の技法から成る柔術世話掛が設置されています。元々の流派から取り入れた技を14流派から組み合わせて構成されており、少数の流派が統合されています。警視拳法には、捕縄技法や活法も含まれており、特に早捕に関しては、技名が付けられていないものが多く、内容が整理されていない印象を与えます。

現在、警視流の技術は多様な流派や技術の伝承と共に進化しており、伝統武道の一環として重要な位置を占めています。

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