堺市乗合タクシー

大阪府堺市が運営するデマンド型交通システム、「堺市乗合タクシー」について解説します。このサービスは、かつて堺市内を巡回していたコミュニティバス「堺市ふれあいバス」や「みはらふれあい号」が2013年に廃止された後、その代替となる公共交通として導入されました。実証実験を経て、2014年 3月10日より本格的な運行が開始されています。

導入の主な目的は、高齢者や障害のある方、あるいは小さなお子さんを連れた保護者など、さまざまな理由で自家用車の利用が難しい方々、いわゆる交通弱者の移動手段を確保することにあります。また、既存の公共交通機関だけでは十分にカバーできない、いわゆる公共交通空白地域における交通の利便性を向上させることも重要な狙いです。

現在、この乗合タクシーは、堺市内のうち堺区を除く6つの行政区で運行されています。特定の時刻に、決められたルート上にある停留所間を結ぶ定時定路線方式を採用しており、合計9つのルートが設定されています。運行業務は、第一交通産業グループに属するタクシー事業者、大阪第一交通株式会社に委託されています。

かつてのコミュニティバスと比較すると、運行形態にはいくつかの違いが見られます。コミュニティバスが主に各行政区内を循環するルートであったのに対し、乗合タクシーのほとんどのルートは、行政区を跨いで複数の鉄道駅間を結ぶ形になっています。また、美原区内を循環する1ルートを除いて、起終点が異なるルート設定です。ただし、一部のルートや停留所の位置については、前身のコミュニティバスの経路を踏襲しており、停留所の外観なども引き継がれている箇所があります。

サービスの趣旨から、代替となる公共交通手段がすでに十分に存在する地域にはルートが設定されていません。さらに、鉄道駅や主要な公共施設など、サービス上「★印」が付された停留所間のみを利用することはできないという制限があります。これは、あくまでも公共交通空白地域や交通弱者のための移動手段としての役割を明確にするためです。

運行日についても改善が図られています。前身のコミュニティバスが週3日のみの運行だったのに対し、乗合タクシーは運行開始当初から月曜日から金曜日までの平日運行となり、利便性が向上しました（ただし年始は運休）。さらに、2015年 11月1日からは毎日運行へと拡大され、より利用しやすくなりました。

2016年 4月1日には、実証実験の期間を終え、本格運行へと移行しました。この際、実証実験時の路線設定を基本としつつ、より広範な地域をカバーできるようにルートが見直され、再編が行われています。

運賃は、大人1回300円、小学生以下の子どもは150円です。堺市在住で65歳以上の方が「おでかけ応援カード」を提示した場合は100円となります。また、各種障害者手帳を提示することで、大人・小人ともに半額の割引が適用されます。

利用方法は、従来の乗合バスとは異なり、完全予約制です。乗車を希望する場合は、事前に電話で予約を入れる必要があります。また、運行ルート上の全ての停留所において予約が全く入っていない場合、その便は運休となります。運行開始当初は午前2便、午後2便の1日計4便でしたが、2015年 4月1日からは午後の便が1便増便され、午前2便、午後3便の計5便体制となりました。予約受付時間も、開始当初は乗車予定日の1週間前から3時間前まで（ただし午前1便は前日18時まで）でしたが、現在は乗車予定日の1週間前から2時間前までと緩和されています。

現行のルートはAからIまでの9ルートです。前述の通り、鉄道駅間や主要な公共施設間（★印の停留所相互間）の利用は制限されています。これらのルートは、実証実験時のルートをベースに再編されたもので、例えばAルートは旧Aルート北部、Bルートは旧Aルート南部など、前身となるルートが定められています。各ルートは、複数の駅を結ぶタイプや、特定の地域内を循環するタイプ（Cルート）など、地域の特性に応じて設定されています。

使用される車両は、運行を委託されている大阪第一交通が所有するセダン型タクシーです。運転手を除くと定員は4名となっています。もし定員を超える予約があった場合は、増車で対応することもありますが、車両の手配がつかない場合は乗車を断るケースもあるようです。

堺市乗合タクシーは、地域の公共交通ネットワークを補完し、特に移動に課題を抱える方々にとって重要な交通手段としての役割を果たしています。

もう一度検索