塙嘉彦

塙嘉彦（はなわ よしひこ）

塙嘉彦は、1935年1月10日に東京府で生まれ、1980年1月25日に白血病で急逝した日本の編集者です。45歳という若さで亡くなりました。

生涯

神官の家系に生まれ、東京都立日比谷高等学校を経て1958年に東京大学仏文学科を卒業しました。大学時代には、大江健三郎と学友でした。卒業後、フランス政府の技術研修生として、『ル・モンド』紙、『フランス・オプセルヴァトゥール』誌、『エクスプレス』でジャーナリズムの経験を積みました。

1959年に中央公論社に入社し、『中央公論』や『季刊中央公論・経営問題』でその編集手腕を発揮し、スター編集者として名を馳せました。『中央公論』編集部時代には、ジャーナリストの松尾文夫に、キッシンジャーの電撃訪中の3ヶ月前にスクープ記事「ニクソンのアメリカと中国──そのしたたかなアプローチ」を書かせ、話題を呼びました。また、山口昌男の執筆活動を支援し、『本の神話学』に所収される論考を書かせました。

その後、文芸誌『海』の編集長に就任し、雑誌の立て直しに尽力しました。以前の編集長と部下の編集者たちの間に対立があり、「混沌の海」とまで言われていた状況を打開し、部下たちをまとめ上げ、『海』の黄金時代を築き上げました。

塙は、ガブリエル・ガルシア＝マルケスやマリオ・バルガス・リョサなど、海外の前衛文学を積極的に日本に紹介しました。また、筒井康隆に初めて純文学作品を執筆させ、小林信彦には「カート・ヴォネガットのような『想像力の文学』」を勧めるなど、作家の新たな可能性を引き出すことにも貢献しました。

塩野七生の担当編集者としても知られ、彼女から最も信頼される存在でした。塩野の代表作である『海の都の物語　ヴェネツィア共和国の一千年』は、塙嘉彦に捧げられています。扉頁には、彼女の深い敬愛と哀惜の念が込められています。

『海』時代には、村松友視や安原顕が部下として塙の下で才能を磨きました。

塙の死後、『ル・モンド』紙は彼の功績を称え、75行にわたる追悼記事を掲載しました。これは、国際的なジャーナリストとしての塙の業績を物語るものです。

訳書

ジャン・ダニエル『ジャーナリストの誕生─職業的自伝の試み』（サイマル出版会、1976年）
クロード・レヴィ＝ストロース『人類学の創始者ルソー』（平凡社、1969年）

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