塩化チオニルリチウム電池

塩化チオニルリチウム電池：高い電圧と信頼性を誇る一次電池

塩化チオニルリチウム電池は、リチウム系一次電池の一種であり、その最大の特徴は、リチウム系電池の中でもトップクラスの3.6Vという高電圧と、幅広い動作温度範囲を有することです。東芝電池では「ウルトラリチウム」の商品名で知られています。

長期保管と高い信頼性

この電池は、負極に金属リチウムを使用し、電解質に塩化チオニルを用いることで、塩化リチウムの不動態皮膜を形成します。この皮膜が自己放電を抑制する役割を果たすため、長期保管が可能となり、ガスメーターや電子機器のバックアップ電源など、信頼性の高い電源供給が求められる用途に最適です。

制限事項：大電流には不向き

一方で、塩化チオニルリチウム電池は内部抵抗が高いという特性を持っています。そのため、モーター駆動やLEDライトなど、大きな電流を必要とする用途には適していません。また、長期保管後に放電を開始すると、不動態皮膜の成長によって電圧が一時的に低下することがあります。

安全性と取り扱いに関する注意

組込み部品として販売されているため、一般市場での流通は多くありません。しかし、その高い信頼性から様々な機器に組み込まれています。ただし、落下や衝撃を与えると、内部の塩化チオニルが漏れて塩化水素や亜硫酸ガスが発生する危険性があるため、取り扱いには細心の注意が必要です。

電池の構造と形状

塩化チオニルリチウム電池は、陽極が液体の構造であるため、縦置きまたは横置きの状態で使用されます。IEC規格による電池の分類では、電気化学的系統を表す記号「E」が用いられます。形状は、コイン形が「R」、四角形が「F」で表されます。

コイン形電池のサイズは、「R」の後に続く3～4桁の数字で表され、最初の1～2桁が直径（mm）、最後の2桁が高さ（0.1mm）を示します（例：ER2032は直径20.0mm、高さ3.2mm）。円筒形電池は、国際規格の乾電池呼称に従うか、またはコイン形と同様の5桁の数字でサイズを表すメーカーもあります（例：ER6、ER14505）。

主要メーカー

塩化チオニルリチウム電池を製造する主なメーカーとしては、以下の企業が挙げられます。

タディランバッテリー
東芝電池
日立マクセル
サフトバッテリー (SAFT)
ネクセル
ウルトラライフ

まとめ

塩化チオニルリチウム電池は、高電圧、低自己放電、広い動作温度範囲といった利点を持ち、長期保管が必要な用途に最適な電池です。しかし、大電流には不向きであり、取り扱いには注意が必要です。その特性を理解した上で、適切な用途に選択することが重要です。

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