塩海足尼

塩海足尼（しおみのすくね）

塩海足尼は、古墳時代に活躍した豪族であり、初代甲斐国造とされています。別名として「しぶみのすくね」や「しおのみのすくね」とも呼ばれます。

概要

『古事記』や『先代旧事本紀』の「国造本紀」によると、塩海足尼の祖先は狭穂彦王とされています。日下部連と同族であると考えられています。塩海足尼は、甲斐国における多くの伝承に登場する人物であり、特に神社の創建に関わる話が多く残されています。

酒折宮の伝承

酒折宮の伝承では、日本武尊が甲斐国を訪れた際、酒折宮を発つ時に「吾行末ここに御霊を留め鎮まり坐すべし」と言って、火打嚢を塩海足尼に授けたとされています。この勅命を受けた塩海足尼は、火打嚢を御神体として月見山の中腹に社殿を建て、これが神社の始まりになったと伝えられています。

また、酒折宮の伝承に登場する東国造に任じられた御火焼之老人を塩海足尼とする説もあります。磯貝正義や原秀三郎といった研究者も、この説を支持しています。

神社創建伝承

塩海足尼は、甲斐国内の歴史ある神社の創建伝承に数多く登場します。以下にその例を挙げます。

美和神社: 景行天皇の時代に、大和国の大神神社から大三輪明神を勧請し、塩海足尼を祭主として祀ったのが始まりとされています。
金櫻神社: 景行天皇40年、日本武尊が東征の帰路に参詣し、塩海足尼に社殿の造営を命じたことが起源とされています。
神部神社: 景行天皇の時代に、塩海足尼が近江国比叡から神を勧請したのが始まりとされています。
中牧神社: 景行天皇40年、日本武尊が東征の際に酒折宮で塩海足尼に勅命を下し、山梨加美郷の中央茅野々丘に創建させたのが始まりとされています。

これらの伝承から、塩海足尼が甲斐国における神社の創建に深く関わっていたことがうかがえます。

下部温泉の開湯伝説

塩海足尼は、神社の創建伝承だけでなく、下部温泉の開湯伝説にも登場します。この伝説では、塩海足尼が領内を巡視中に偶然温泉を発見し、「塩部（下部）の湯」と名付けたことが、下部温泉の起源とされています。この伝説は、塩海足尼が地域に密着した存在であったことを示しています。

国立神社

国立神社では、国造塩海足尼が祭神として祀られています。これは、塩海足尼が甲斐国にとって重要な人物であったことを示唆しています。

系譜

塩海足尼は、狭穂彦王の3世孫にあたる臣知津彦公の子とされています。

まとめ

塩海足尼は、古墳時代の甲斐国において重要な役割を果たした豪族であり、初代甲斐国造として知られています。日本武尊との関わりや、多くの神社の創建に関わる伝承が残されており、地域の人々にとって重要な歴史的人物として語り継がれています。また、下部温泉の開湯伝説にも登場するなど、地域に根付いた伝説を持つ人物でもあります。

脚注

『古事記』
『先代旧事本紀』
「国造本紀」

関連項目

飛鳥時代以前の人物一覧
* 国造

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