金櫻神社

金櫻神社の概要

金櫻神社は、山梨県甲府市の北部、荒川上流の山間部に位置する歴史ある神社です。その起源は、雄略天皇時代（465年）に金峰山に本宮が創建されたことに遡るとされています。この神社は、金峰山信仰（御嶽信仰）の中心的な存在であり、かつては蔵王権現と呼ばれていました。慶応4年（1868年）に「金櫻神社」と改称され、現在に至っています。

神社の周辺には、御師屋敷や宿坊が立ち並び、門前町として栄えた御岳村の面影を残しています。神体として祀られているのは、高さ20メートルにも及ぶ花崗岩質の五丈岩です。また、祭神として、少名彦命、大己貴命、須佐之男命、日本武尊、櫛稲田媛命の五柱が祀られています。さらに、球形に磨かれた水晶の「水の玉」2つと「火の玉」3つが、神宝として大切に保管されています。

金櫻神社の歴史

社記によると、景行天皇40年に日本武尊が東征の帰路にこの地を訪れ、甲斐国造の塩海宿禰に社殿の造営を命じたとされています。その後、雄略天皇10年に神勅により御岳山に社殿が建てられました。天武天皇2年（674年）には、大和国金峰山から蔵王権現と金精大明神が勧請され、それぞれ本宮と中宮に合祀されました。

古代には甲斐国司が参詣し、空海も自筆の経文を奉納したと伝えられています。甲斐武田氏からは祈願所として崇拝され、始祖の逸見清光が中宮社殿を再建したとされています。鎌倉時代には、幕府執権の北条時頼が大般若経を、日蓮が法華経をそれぞれ奉納したと記録されています。御像石の頂からは「甲斐派美」と呼ばれる湧水が湧き出ており、甲府市を流れる荒川や相川だけでなく、武蔵国の多摩川、信濃国の千曲川の水源とも信じられ、耕作守護神としても信仰を集めました。そのため、雨乞いの祭祀も行われていました。

また、ニホンオオカミを敬う眷属信仰もこの地域で盛んでした。秩父地方の三峯神社や奥多摩の武蔵御嶽神社を中心に広がった狼信仰の影響を受け、金櫻神社も狼信仰の神社として知られるようになりました。『甲斐国社記・寺記』には、白狗が日本武尊の案内役を務めたという説話が残っており、現在でも狼札が配布されています。

境内の様子

金櫻神社の境内には、中宮本殿と東宮本殿がありますが、これらは中世の建築様式を持つとされ、室町時代の建立と考えられています。『甲斐国志』によれば、里宮本宮は武田信義、中宮本殿は源清光、東宮本殿は浅野長政によって建立されたとされています。

中宮本殿は三間社流造、東宮本殿は方三間・単層の入母屋造で、どちらも檜皮葺の屋根を持ちます。これらの本殿は、1907年に国の重要文化財に指定されましたが、1955年の火災で焼失してしまいました。現在の朱塗りの社殿は、1959年に再建されたものです。

境内には、武田勝頼が奉納したと伝わる能面8面、住吉蒔絵手箱、家紋散蒔絵手箱、筏散蒔鼓胴、武具散蒔絵鼓胴といった山梨県指定有形文化財も所蔵されています。また、堀友二作の「昇竜降竜」も奉納されています。さらに、境内には「鬱金の桜」が咲き、多くの参拝客を魅了します。

例大祭は4月21日から22日にかけて行われ、御岳大神楽が奉納されます。現在、金櫻神社の神域は秩父多摩国立公園に属しており、御岳昇仙峡とともに観光名所となっています。

指定文化財

山梨県指定有形文化財として、以下の5件が指定されています（1967年8月7日付）。

能面8面
住吉蒔絵手箱
家紋散蒔絵手箱
筏散蒔鼓胴
* 武具散蒔絵鼓胴

甲府市指定文化財（天然記念物）として、金櫻神社のスギ群が1977年3月1日に指定されています。

かつて重要文化財に指定されていた中宮本殿と東宮本殿は、1955年12月18日の火災で焼失しました。

その他の情報

金櫻神社は、山梨県を代表する古社であり、その歴史と文化的な価値は非常に高いと言えます。美しい自然に囲まれた境内は、訪れる人々に安らぎを与え、多くの人々から信仰を集め続けています。

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