塩瀬村 (兵庫県)

塩瀬村（しおせむら）とは

塩瀬村は、かつて兵庫県有馬郡に存在した村で、1889年の町村制施行により名塩村と生瀬村が合併して誕生しました。1951年の昭和の大合併により西宮市に編入され、その歴史を閉じました。

地理

村域は、現在の西宮市北部、おおむね武庫川の右岸一帯に広がっていました。ただし、東側の生瀬地区では武庫川の左岸にも町域が及んでおり、宝塚駅付近に近接していました。村は、琴鳴山、高座山、秀ヶ辻山といった山々に囲まれ、武庫川や名塩川といった河川が流れる自然豊かな地域でした。

歴史

前近代

塩瀬村を構成する名塩と生瀬は、それぞれ長い歴史を持っています。

生瀬

武庫川沿いに位置する生瀬は、摂津平野と有馬を結ぶ有馬街道（大坂街道）の宿場町として古くから栄えました。13世紀にはすでに宿駅としての記録が残っています。浄橋寺には、武庫川に架かる生瀬橋の創建にまつわる伝説が伝えられています。江戸時代には、参勤交代の宿駅や物資の中継地として発展しました。

名塩

名塩川が武庫川に合流する木之元には、聖徳太子ゆかりの地蔵伝説がある木元寺があります。室町時代には赤松則村によって伽藍が建設されました。名塩は、蓮如が草庵を設けた教行寺を中心に寺内町として発展し、名塩雁皮紙（名塩鳥の子紙）という特産品を持つ和紙生産の郷として知られています。江戸時代後期には、蘭学者の億川百記を輩出し、その娘の八重は緒方洪庵に嫁ぎました。また、18世紀中頃には武田尾温泉が知られるようになりました。

近代

1889年の町村制施行により、名塩村と生瀬村が合併し、塩瀬村が発足しました。1898年には、阪鶴鉄道（現在のJR福知山線）が開通し、有馬口駅（現在の生瀬駅）が開業しました。1951年、昭和の大合併に伴い、塩瀬村は西宮市に編入されました。

後史

西宮市は、旧塩瀬村の地域を「塩瀬地域」と称し、名塩地区と生瀬地区に区分しています。1980年代には大規模な宅地開発が進められました。現在、西宮市役所は塩瀬支所を名塩に、塩瀬支所生瀬分室を生瀬に置いています。

産業

塩瀬村の主要な産業としては、名塩雁皮紙（名塩紙）の生産が挙げられます。また、明治期には、ウィルキンソン（ウヰルキンソン・タンサン鉱泉株式会社）が生瀬の天然炭酸鉱泉を採水地として炭酸水の販売を行っていました。

教育

村内には、塩瀬村立生瀬小学校と塩瀬村立名塩小学校、塩瀬村立塩瀬中学校がありました。

名所・旧跡

浄橋寺（生瀬）
生瀬皇太神社
琴鳴山（生瀬）
蓬萊峡（生瀬）
教行寺（名塩）
名塩八幡神社
木ノ元地蔵尊木元寺（名塩）
武田尾温泉（名塩）

交通

鉄道は、日本国有鉄道（現JR福知山線）の生瀬駅がありました。現在は、西宮名塩駅も旧村域にあります。

道路は、二級国道176号福知山大阪線（現在の国道176号）が村域を通過していました。また、大阪方面から有馬温泉に至る有馬街道（大坂街道）も重要な交通路でした。

著名な人物

松岡修造：実業家。松岡汽船（現・商船三井）の創業家出身。
緒方八重：緒方洪庵の妻。
上中啓三：化学者。高峰譲吉の助手としてアドレナリンの発見に貢献。
八木米次：政治家、西宮市長。
弓場勇：ブラジル・弓場農場主。
馬場順三：政治家、西宮市長。
* 谷野武信：製紙工芸家。重要無形文化財「名塩雁皮紙」保持者（人間国宝）。

塩瀬村は、豊かな自然と歴史、文化に彩られた地域でした。

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