蓮如

蓮如上人：本願寺中興の祖、波瀾万丈の生涯

蓮如は、室町時代における浄土真宗の僧侶であり、本願寺派第8世宗主、真宗大谷派第8代門首として知られています。諱は兼壽、院号は信證院で、法印権大僧都の位にありました。衰退の危機にあった本願寺を再興したことから「本願寺中興の祖」と呼ばれ、現在でも広く敬われています。明治15年には明治天皇より慧燈大師の諡号を追贈され、その功績は後世にまで語り継がれています。

生い立ちと本願寺の継承

応永22年（1415年）、京都東山の、当時天台宗青蓮院末寺であった大谷本願寺で、7世存如の長子として誕生しました。生母については詳細は不明ですが、被差別部落出身という説もあります。幼少期は、隆盛を極める佛光寺教団と対照的に衰退の一途を辿る本願寺の中で過ごしました。

永享3年（1431年）、17歳で中納言広橋兼郷の猶子となり、青蓮院で得度。兼壽と名乗り、法名に蓮如と名乗るようになりました。その後、興福寺大乗院で修学し、父の補佐を務めながら多くの聖典を書写しました。永享12年（1440年）、祖父・巧如の死去後、父存如を支え続けました。

嘉吉2年（1442年）には長男順如が誕生。その後、父と共に各地で布教活動を行い、康正元年（1455年）には最初の妻・如了尼が亡くなります。長禄元年（1457年）、父存如の死去に伴い、本願寺8世を継承しました。しかし、その就任には異母弟蓮照を擁立しようとする動きがあり、叔父の如乗による裁定によって蓮如が正式に就任することとなりました。この継承問題は、本願寺内部の混乱を象徴する出来事でした。

困難と再興

蓮如が本願寺を継承した当時、本願寺は青蓮院の末寺に過ぎず、延暦寺からの弾圧にも苦しんでいました。延暦寺は寛正6年（1465年）に本願寺と蓮如を「仏敵」と認定し、大谷本願寺を破壊。蓮如は親鸞聖人の御影を奉じて、近江各地を転々とすることになります。この間、専修寺の真慧との絶縁など、様々な困難に見舞われました。

その後、延暦寺との和議を結び、園城寺の庇護のもと、大津南別所に顕証寺を建立。文明3年（1471年）、越前吉崎に移り、吉崎御坊を建立しました。吉崎御坊は急速に発展し、多くの門徒が集まる一大拠点となりました。しかし、加賀守護富樫氏の内紛に巻き込まれたり、下間蓮崇による一揆の扇動など、困難は尽きませんでした。

文明7年（1475年）、吉崎を去り、その後、河内出口（後の光善寺）、山科と拠点を移し、文明13年（1481年）には佛光寺派の多くの坊が蓮如に合流。山科本願寺は文明15年（1483年）に落成しました。

本願寺の発展と晩年

山科本願寺落成後も、蓮如は精力的に布教活動を行い、各地に門徒を増やしました。加賀一向一揆の鎮圧にも尽力し、本願寺の発展に大きく貢献しました。延徳元年（1489年）、75歳で寺務を5男の実如に譲りました。晩年は山科南殿に隠居し、「信證院」と号しました。明応5年（1496年）には大坂石山に大坂御坊（後の石山本願寺）を建立しました。

明応8年（1499年）3月25日、山科本願寺で85歳で没しました。5人の妻との間に27人の子をもうけ、その子孫は浄土真宗の発展に大きく貢献しました。

蓮如の布教と思想

蓮如の布教は、分かりやすい言葉で書かれた『御文』（『御文章』）が中心でした。また、勤行の方法を改め、『正信念仏偈』と『三帖和讃』を唱える方式を確立。門徒の信仰生活の規範を示す「改悔文」なども著しました。蓮如の教えは、庶民に広く受け入れられ、浄土真宗の発展に大きな影響を与えました。

参考文献

浄土真宗教学研究所浄土真宗聖典編纂委員会編『蓮如上人御一代記聞書』 現代語版、本願寺出版社
真宗大谷派教学研究所編『真宗再興の人 蓮如上人の生涯と教え』真宗大谷派宗務所出版部
* その他多数

まとめ

蓮如は、数々の困難を乗り越え、衰退した本願寺を再興し、浄土真宗を大きく発展させた偉大な人物です。その生涯は、現代社会においても、困難に立ち向かう勇気と、人々を導くリーダーシップの重要性を示唆するものです。

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