塵肺

塵肺（じんはい）とは

塵肺は、粉塵や微細な粒子を長期間吸引することで、肺の細胞にこれらの物質が蓄積され、発症する肺疾患の総称です。1960年に制定された塵肺法では、「粉塵を吸入することによって肺内に生じる繊維増殖性変化を主体とする疾患」と定義されています。この病気は、咳、痰、息切れ、呼吸困難、動悸などの症状を引き起こし、特に粉塵に曝露される職業に従事する方々に多く見られます。

塵肺の原因

塵肺の原因となる粉塵には、以下のように大きく分けられます。

有機粉塵

• - 綿肺、コルク肺、農夫肺、砂糖きび肺、線香肺、合成樹脂肺など

無機粉塵

• - 珪肺（珪酸粉塵）、石綿肺（アスベスト）、蝋石肺、滑石肺、珪藻土肺など

特定粉塵

• - 石綿（アスベスト）が代表的で、これに関連する肺疾患も非常に危険です。

その他

• - 紙粉、穀物粉、煙、油煙、煤、風塵など、様々な種類の粉塵が存在します。

このような環境に従事する職業、例えば鉱山労働者や製紙業、石切業、アスベスト関連の建設業者などにおいて、塵肺は職業病として多く発生しています。

塵肺の歴史

塵肺は古くから知られる職業病の一つです。紀元前400年頃、ヒポクラテスが鉱夫に呼吸困難の症状をともなうことを記録しており、これは現代では鉱毒についての言及と解釈されています。1556年に書かれたアグリコーラの著作でも粉塵と呼吸困難との関連が述べられていますが、この時代は学問的な理解が不十分でした。

19世紀半ばからは、病理解剖の普及やレントゲン技術の導入によって塵肺の研究が進みました。特に1838年にはストラットンが炭粉沈着に関する理論を提唱し、その後ツェンカーが鉄粉沈着に関する疾患を提唱しました。

1915年には、産業医学の権威であるコリスが粉塵による影響を病理学的に証明し、粉塵が原因であることが明確になりました。

塵肺のメカニズム

人間の呼吸器は、異物を排除するための機能がありますが、1～5μmの大きさの粉塵は気管や気管支に沈着し、1μm以下の粉塵は肺胞に到達します。これらの粉塵は最終的には体外に排出されますが、一部が体内に残り続け、高濃度の粉塵に曝露されることで肺胞に蓄積されます。長期間の曝露により肺胞が破壊されたり、炎症を引き起こすことがあります。初期の段階では自覚症状がないため、知らず知らずのうちに進行することが多いです。

塵肺の種類

塵肺は、その原因となる粉塵の種類によって異なる症状の出方や進行速度を示します。以下に主要な塵肺の種類を示します。

• - 珪肺：遊離珪酸を含む粉塵の吸入。
• - アルミ肺：アルミニウム粉塵による急速な進行。
• - ボーキサイト肺：極めて早い進行で、生命にかかわることも。
• - 酸化鉄肺（鉄肺）：電気溶接工に多い、ゆっくりと進行。
• - 石綿肺：アスベストの吸入に起因し、肺癌リスクが高まります。

治療と予防

塵肺の根治は難しく、主に対症療法が行われます。気管支拡張薬や酸素吸入などが処方され、結核との合併症にも対処されます。予防が重要であり、作業環境での粉塵発生を抑えることが求められます。例えば、現場の散水や除塵装置の使用、個人用の防塵マスクの着用などが有効です。

また、事業者には健康診断の実施が義務付けられています。これにより、早期の発見が可能になり、適切な措置が講じられることが期待されます。

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