境部薬

境部 薬の生涯

境部 薬（さかいべ の くすり）は、飛鳥時代における重要な武将であり、歴史に名を刻んだ人物です。彼はまた、坂合部薬（さかあいべのくすり）とも表記され、姓は連に所属しています。彼の生涯には数々の出来事があり、特に有間皇子の変と壬申の乱がその核心となります。

有間皇子の変

境部薬の名が歴史的に知られるようになったのは、658年に発生した有間皇子の変です。この事件は、斉明天皇の留守を狙った謀反で、当時の都において有間皇子と蘇我赤兄が連携し、挙兵する計画を立てていました。この計画に、境部薬や他の数名も関与していたとされています。

日本書紀では、斉明天皇4年（658年）11月3日と5日に、しかし不行使な状況にあった天皇と皇太子が不在だった頃、有間皇子が蘇我赤兄らと共に事を起こしたことが記されています。しかし、この策謀は思うようには運ばず、赤兄が有間皇子の家を囲む形で計画が露見します。9日は、有間皇子と彼の同士たちが捕えられ、11日には有間皇子が命を落とすこととなりますが、境部薬は尾張国への流罪を選ばれることとなります。

彼の流罪は、後の壬申の乱に向けた重要な伏線となったとも考えられています。当時の一部の学者たちの間では、境部薬が赤兄と有間皇子を共謀したのではないかと推測されることもありますが、赤兄が罪に問われなかった点については疑問が残ります。

壬申の乱

壬申の乱は672年に発生し、境部薬はこの戦いで大友皇子（後の弘文天皇）の側に立ち、その指揮官として活動しました。この乱は、天武天皇と弘文天皇との間での皇位継承を巡る争いとして知られています。

この乱の際に、境部薬は美濃国不破郡に拠る大海人皇子（後の天武天皇）の軍と、近江国大津に本拠を置く大友皇子の軍との戦闘に参加します。7月7日に行われた近江方面での戦闘では、境部薬はその将として参加し、近江軍と接触します。この戦いで、境部薬は戦死したと記録されていますが、その役割は明確には記されておらず、彼が近江軍の総指揮官だったのか、あるいはその中の一指揮官であったのかははっきりとはしていません。

境部薬の影響

境部薬の存在は飛鳥時代の政治状況において、一時的に流刑を受けたものの、壬申の乱では再び舞台へと戻りました。流罪から復帰し、再び戦に参加したことから、彼の戦略やその忠誠心が評価されたことが伺えます。彼の生涯は、その時代の複雑な権力闘争の中での重要な一端を担っており、後の時代にも影響を与えたと考えられます。

境部薬の人生は、運命のいたずらが絡む波乱万丈なものであり、歴史の中で彼の役割を知ることは、飛鳥時代の政治や社会を理解するために欠かせない要素といえるでしょう。

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