増命

増命（ぞうみょう）について

増命（ぞうみょう）は、平安時代前期の著名な天台宗の僧侶であり、承和10年（843年）から延長5年（927年）までの間に生きました。増命の父は左大史の桑内安峰で、彼はその生涯を通じて天台宗の教えの普及と寺院の再興に尽力しました。彼は死後に静観僧正の称号を授与され、また第10代天台座主としても知られています。彼の任期は、延喜6年10月17日から延喜22年5月26日までの約16年間にわたりました。

生涯の歩み

増命は比叡山の西塔院にて延最に師事し、そこで円仁から天台教学を学びながら、円珍からは灌頂を受けました。仏教に対する深い理解と信仰に基づいて、彼は清和天皇のために『宗論御八講』という重要な著作を貞観10年（868年）にまとめました。この作品は、当時の天台宗の教えや宗派間の論争についての考察を、皇帝に対して示したものです。

仁和元年（888年）には西塔院の主となり、比叡山の他の寺院と比較して衰退していた西塔の再興に尽力しました。彼の努力により、西塔院は再生し、多くの信者が集まる場所となりました。昌泰2年（899年）には園城寺の長吏に就任し、その後、延喜6年（906年）には天台座主に任じられました。彼の指導下で、天台宗はさらに発展し、多くの僧侶が育成されました。

また、宇多法皇が出家する際、増命は受戒と受灌の師となり、法皇が彼が住む西塔院や千光院を余暇に訪れることが多くありました。さらに、宮中において玉体安泰の祈願を行うことも頻繁でした。当時、菅原道真の怨霊に関する噂が流れていたため、増命は皇太子保明親王の急死の際には、百日にわたって修法を行い、宮中での安寧を祈りました。

延喜15年（915年）には少僧都に昇進し、延長3年（925年）には僧正にまで昇進しました。彼は延長5年（927年）において、自身の師である円珍に智証大師の称号を授与するために努力し、功績を残しましたが、残念ながら彼自身は同年中に亡くなってしまったため、その授与の光景を目にすることはありませんでした。

増命に関連する文化

増命は、その生涯において宗教的な事績を数多く残し、特に宇治拾遺物語には彼を主人公とした多くの説話が収められています。これらの物語は、増命の教えや人柄、さらには当時の社会における宗教の役割を象徴的に示しており、彼の影響力を今に伝えています。増命の業績は、今日の天台宗の基盤の一つとなっており、その教えは未だに多くの仏教徒に受け継がれています。

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