増山太助

増山太助：社会運動家、研究家としての生涯

増山太助（ますやま たすけ）は、1913年8月20日に東京で生まれ、2007年5月27日に生涯を閉じた日本の社会運動家、社会運動研究家です。彼の人生は、激動の20世紀の日本社会と深く関わり、社会変革を求める情熱に満ちたものでした。

学生時代から社会運動へ

増山は、開成中学、成城高等学校を経て、京都帝国大学経済学部に進学しました。学生時代から社会問題に関心を抱き、成城高校時代には自由主義教育を求める運動に参加。京大在学中は、反ファシズム運動の一環として学生運動を組織し、雑誌『学生評論』を創刊するなど、早くから社会変革への強い意志を示しました。

1938年には、治安維持法違反で逮捕されましたが、不起訴で釈放。その後、読売新聞社に入社し、経済記者として活動する傍ら、労働運動にも深く関わることになります。

戦後の労働運動

終戦後、増山は読売新聞社に復帰すると、直ちに労働組合運動を主導しました。彼は、経営幹部の戦争責任追及と社内民主化を求め、読売争議の先頭に立ちました。第一次読売争議では、従業員組合書記長として勝利に導きましたが、第二次読売争議では敗北を喫しました。

これらの争議中、増山は日本新聞通信放送労働組合（新聞単一）の副執行委員長・組織部長としても活動。また、全日本産業別労働組合会議（産別会議）の幹部としても活動するなど、当時の労働運動において重要な役割を果たしました。また、日本ジャーナリスト連盟の設立にも尽力しました。

日本共産党での活動

労働運動と並行して、増山は日本共産党にも入党し、党員としても活動を始めます。読売新聞社を退社後は、日本民主主義文化連盟の常任理事として、文化活動にも携わりました。その後、日本共産党の全国オルグとして各地を回り、党の組織強化に貢献。党本部では、文化部、選挙対策部などの責任者を務め、党の政策立案にも関与しました。

しかし、1958年の党大会で党章草案に反対したことを機に、党の役職を辞任。1979年には、規律違反を理由に党を除名されました。この間も増山は、社会運動への関心を失うことなく、様々な活動を続けました。

晩年と研究活動

晩年は、静岡県熱海市に移住し、執筆活動に専念しました。労働学校での後進の指導や、「協同・未来」の顧問、「日本社会主義・共産主義運動史研究会」の代表など、様々な社会運動に関与しました。

著書には、『読売争議1945／1946』、『産別会議十月闘争――新聞放送ゼネストをめぐって』、『検証・占領期の労働運動』、『戦後期左翼人士群像』などがあり、自身の経験を踏まえ、戦後の労働運動や社会運動史を考察しました。これらの著作は、日本の社会運動史研究において、貴重な資料となっています。

増山太助は、激動の時代を生き抜き、社会変革を追い求めた人物でした。彼の生涯は、日本の社会運動史において重要な位置を占めており、その思想と活動は、現代社会にも多くの示唆を与えています。

増山太助の主な活動と役職

成城高等学校での自由主義教育運動
『学生評論』創刊
読売新聞社記者
読売争議における闘争委員、従業員組合書記長
日本新聞通信放送労働組合副執行委員長
全日本産業別労働組合会議（産別会議）幹部
日本民主主義文化連盟常任理事
日本共産党幹部
『健康会議』編集長
『一同』編集・発行人
『新地平』代表取締役・主幹
「協同・未来」顧問
「日本社会主義・共産主義運動史研究会」代表

主な著書

『読売争議1945／1946』
『産別会議十月闘争――新聞放送ゼネストをめぐって』
『検証・占領期の労働運動』
『戦後期左翼人士群像』

参考文献

吉田健二「読売争議のその後（１）増山太助氏に聞く」大原社会問題研究所雑誌485号（1999年4月号）所収
吉田健二「読売争議のその後（２）増山太助氏に聞く」大原社会問題研究所雑誌486号（1999年5月号）所収
吉田健二「日本ジャーナリスト連盟の結成と新聞単一（上）増山太助氏に聞く」大原社会問題研究所雑誌593号（2008年4月号）所収
吉田健二「日本ジャーナリスト連盟の結成と新聞単一（中）増山太助氏に聞く」大原社会問題研究所雑誌594号（2008年5月号）所収
吉田健二「日本ジャーナリスト連盟の結成と新聞単一（下）増山太助氏に聞く」大原社会問題研究所雑誌596号（2008年7月号）所収
* ｢増山太助さんを偲ぶ会のご案内｣、協同・未来機関紙｢未来｣第82号（2007年9月号）所収

もう一度検索