増本健

増本健は1932年6月に宮城県仙台市で生まれ、金属工学者・物理学者としての道を歩み始めました。彼の父、増本量から受けた影響のもと、彼は幼少期から学問に対する情熱を抱いていました。また、兄の増本剛も学者として活動しており、増本健は常に高い学問への志を持っていました。1955年に東北大学工学部金属工学科を卒業した後、1960年には同大学院で工学博士号を取得。その後、東北大学金属材料研究所（金研）にて助手、助教授を経て、1971年には教授に就任します。1989年から1996年には金研の所長を務め、1996年には東北大学を退官し名誉教授に就任しました。

その後、電気磁気材料研究所（現：公益財団法人電磁材料研究所）の専務理事および附属研究所長に就任し、体調を崩した期間を経て、2009年からは同研究所の理事長を務めてきました。さらに、2015年からは相談役（グランドフェロー）として活動を続けています。彼は日本学術会議の会員としても3期9年にわたり貢献し、文部科学省の科学官や様々な学術振興活動に関与しています。

増本の業績はアモルファス金属の分野において特に注目されます。1970年代初頭、彼はアモルファス金属という新しい材料の存在を示し、その特性を明らかにしました。その研究は、結晶構造に基づく従来の金属研究とは異なる新たな材料科学の方向性を切り開くものでした。アモルファス金属は、結晶材料では実現できない特異な物性を持つことで、現代の産業において重要な役割を果たすようになっています。

特に彼は、金属のアモルファス化によって得られる三大特性—強靭性、超耐食性、軟磁性—を発見し、これらの特性が産業に与える影響を示しました。また、アモルファス金属の生成方法やその利用方法に関する新たなアプローチを提示し、多くのアモルファス合金の開発に成功しました。

その功績を反映し、彼は1350編以上の論文および著書を執筆し、250を超える特許も取得しています。彼の研究は国際的にも評価されており、材料科学の分野において引用数が高く、世界ランキングにおけるトップ10を維持しています。

その他の彼の業績には、安定なアモルファス合金の発見や新たな大型材料の製造方法の開発、さらにはナノ結晶材料の研究などが含まれています。これらの発見は、省エネトランスや電子機器部品など、さまざまな産業で実用化されています。さらに、彼は文化功労者として顕彰され、多くの学術賞を受賞しており、その功績は多岐にわたります。

現在も増本健は、電磁材料研究所において指導的な役割を果たし、日本及び世界の金属工学界において影響力を持ち続けています。彼の研究は新しい材料科学の発展に寄与し、次世代の技術革新においても重要な役割を果たすことでしょう。

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