増殖 (YMOのアルバム)

アルバム『増殖 - X∞ Multiplies』の概要

『増殖 - X∞ Multiplies』は、イエロー・マジック・オーケストラ（YMO）の4枚目のスタジオアルバムであり、1980年6月5日にアルファレコードからリリースされました。このアルバムは、クリス・モスデルが作詞、細野晴臣、坂本龍一、高橋ユキヒロが作曲を手がけており、エルマー・バーンスタインによる映画『荒野の七人』（1960年）のテーマ曲を取り入れたイントロや、アーチー・ベル＆ザ・ドレルズの有名な曲「タイトゥン・アップ」のカバーも収録されています。 特に特徴的なのは、当時人気のコントユニット「スネークマンショー」によるコントが曲間に挿入されている点です。

リリースとその背景

本作は、前作『パブリック・プレッシャー』の成功を受けて制作されましたが、アルファレコードが求めたライヴ音源での続編に細野が反発し、代案として本作を提案。オリコンチャートでは最高位1位を獲得し、日本国内での売上は41.2万枚に達しました。先行シングルはリリースされず、後に「タイトゥン・アップ」がシングルとしてカットされました。

ツアーとイベント

アルバムリリース前の1980年3月21日から5月7日にかけて、YMOは日本国内ツアー「テクノポリス2000-20」を実施しました。このツアーでは、特に「ナイス・エイジ」と「シチズンズ・オブ・サイエンス」が演奏されましたが、ツアー全体として本作の収録曲がフィーチャーされることとなります。時には観客とのやり取りで緊張が生まれ、イベントが思うように進行しないこともありましたが、これらの経験がアルバムのユーモアやスタイルに影響を与えています。

アルバムの制作

録音は1979年末から1980年の初めにかけて行われ、細野が拒んだライヴアルバムの代わりにスタジオアルバムとして企画されました。高橋ユキヒロは、ボーカル中心の楽曲を制作したいという思いを持っており、ラジオ番組『スネークマンショー』に感化されていたことが、アルバム全体の構成に影響を与えています。

登場するコント

スネークマンショーによるコントは、本作の大きな特徴であり、1976年から1980年に放送されたラジオ番組に基づいています。コントの内容は、時事ネタやパロディを含むもので、社会風刺的な要素が盛り込まれています。これにより、音楽とコントの間で新しい形のエンターテインメントが展開されており、楽曲のみにとどまらない多面的な楽しみ方が可能です。

音楽スタイルと評価

アルバム内の楽曲は、ジャンルを超えた多彩なスタイルが特徴であり、特に「ナイス・エイジ」と「シチズンズ・オブ・サイエンス」は商業的に注目を浴びました。音楽的にはニュー・ウェイブやスカの影響を受けつつも、YMOならではの独特な表現を持っています。批評家からは、当時の音楽シーンにおいて新しさとユーモアを兼ね備えた作品として高く評価されました。特に、スネークマンショーとのコラボレーションが新たな風を吹き込み、聴き応えのあるアルバムとなりました。

まとめ

『増殖 - X∞ Multiplies』は、YMOの音楽的冒険心と独創性を象徴する作品であり、そのユニークな構成とコンセプトは今なお多くのリスナーに愛されています。アルバムは単なる音楽作品に留まらず、当時の文化や社会に対する批判や風刺を含む、深みのあるエンターテインメントとして評価され続けています。

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