増田久弥

増田 久弥

日本の数学者、増田 久弥（ますだ きゅうや）は、1937年11月25日に生まれ、2018年2月27日にこの世を去った。享年80歳。彼の専門分野は、現代数学の重要な柱である関数解析学および偏微分方程式の研究であった。長年にわたり日本の数学教育と研究を牽引し、東京大学および東北大学で教鞭を執り、それぞれの大学から名誉教授の称号を授与されている。その功績に対し、国からは位階従四位、勲等瑞宝中綬章が贈られている。

増田氏の主な研究対象は、物理学や工学の幅広い分野で重要な役割を果たす非線形偏微分方程式であった。特に、流体の運動を記述するナヴィエ・ストークス方程式や、化学反応や生物現象における拡散と反応の相互作用をモデル化する反応拡散方程式の理論において、顕著な業績を残した。これらの研究は、数学理論の発展に寄与しただけでなく、関連する科学技術分野への応用においても基礎的な知見を提供した。

彼は教育者として、また研究者として、多くの重要な著作を世に送り出した。その単著には、自身の専門である関数解析学の基礎から応用までを体系的にまとめた『関数解析』（裳華房）や、非線形現象を数学的に扱うための手法を解説した『非線形数学』（朝倉書店）などがある。また、岩波講座基礎数学シリーズの一巻として、偏微分方程式の重要なクラスである非線型楕円型方程式に関する著作も執筆している。さらに、発展方程式理論に関する専門書『発展方程式』（紀伊國屋書店）や、応用解析学に関する広範な知識を網羅した『応用解析ハンドブック』（丸善出版）にも関わっている。

共著や編著においても、数々の重要な書籍に関与した。谷島賢二氏の著書『シュレーディンガー方程式I, II』や、西谷達雄氏の著書『線形双曲型偏微分方程式』では、砂田利一氏、堀田良之氏と共に編集に携わり、これらの数学書の質の向上に貢献した。また、三村昌泰氏との共著で、非線形偏微分方程式に関する研究集会の成果をまとめた『Nonlinear PDEーJapan symposium』シリーズ（紀伊國屋書店）を出版している。

国際的な活動も精力的に行い、洋書としても共編著を複数出版している。ナヴィエ・ストークス方程式に関する著名な国際会議であるオーバーヴォルファッハ会議の議事録をまとめた『The Navier-Stokes Equations Theory and Numerical Methods』（Springer）シリーズでは、M.I. Heywood氏、R. Rautmann氏、V.A. Solonnikov氏ら国際的な研究者と共に編集者を務めた。非線形偏微分方程式に関する研究動向を紹介するシリーズ『Recent Topics in Nonlinear PDE』（North Holland）では、三村昌泰氏や鈴木貴氏と共に編集を担当し、当該分野の国際的な発展に貢献した。

2018年2月27日、誤嚥性肺炎のため、80歳で死去。彼の数学研究における深い洞察と、教育・著述を通じた後進の指導は、日本の数学界に大きな足跡を残した。研究者としての詳細な経歴や業績については、日本の研究.com、researchmap、J-GLOBALなどの外部データベースでも参照することができる。

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