増田清 (建築家)

増田清：知られざる名建築家

増田清（ますだ きよし、1888年9月9日-1977年2月9日）は、20世紀前半に活躍した日本の建築家です。大阪を主な活動拠点とし、鉄筋コンクリート（RC）構造の建築物を数多く設計しました。しかしながら、その功績にもかかわらず、知名度は高くありません。そのため、「知られざる名建築家」として紹介されることも少なくありません。現在、彼の設計による建物は多く現存していませんが、その建築思想と技術は、日本の近代建築史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。

生い立ちと教育

増田家は江戸時代から続く御家人でした。増田清は、父が陸軍に所属していたため、福島県桑折町で生まれ、東北各地を転々としながら少年時代を過ごしました。

学業では、青森県立第一中学校（現青森県立弘前高等学校）を経て、第一高等学校を卒業。その後、東京帝国大学建築学科に進学し、佐野利器教授に師事しました。同時期には、後の建築界を担う多くの才能豊かな学生たちが学んでおり、増田清も彼らと共に切磋琢磨した日々を送りました。大学卒業後には、安藤組（現在の安藤ハザマ）大阪支店に入社しています。

建築家としてのキャリア

安藤組での勤務を経て、増田清は大阪府土木課に建築技師として入庁。府立大阪医科大学病院（現大阪大学医学部附属病院）の火災による焼失を受け、その再建設計にも携わりました。その後、営繕課大阪医科大学建築事務所長に就任するなど、公務員として建築界に貢献しました。

1924年には、大阪府技師を辞職し、大阪市で増田建築事務所を設立。独立後は、大阪を中心に、京都、奈良、兵庫、東京、広島、呉など各地でRC構造の建築物を設計しました。1935年には事務所を閉鎖し、東京に移って安藤組取締役技師長に就任。戦後は安藤組を退社した後も、建築の仕事に携わり続けました。1959年頃には増田建築事務所を再開。1966年には日本建築学会から感謝状と終身会員の称号を授与されています。

建築の特徴と業績

増田清の建築は、芸術性や装飾性よりも、構造美と機能美を重視したことが大きな特徴です。特に、耐震性を極めて重視しており、堅牢な建物を設計することで知られています。これは、東京帝国大学在学中に師事した佐野利器教授の影響が強いと考えられます。

1923年の関東大震災は、日本の建築界に大きな衝撃を与え、耐震性への関心の高まりをもたらしました。増田清は、この時代を背景に独立し、耐震性を最優先に考えた建築設計で数々の建物を手掛けました。特に大阪では、多くの小学校を設計しており、「増田清なしには大阪の鉄筋コンクリート建築は語れない」と言われるほど、その貢献は大きいです。

彼の設計による建物の中には、大阪大空襲や東京大空襲、広島への原子爆弾投下といった甚大な災害を生き延びたものも多数存在します。代表作である「三木楽器本店」（国の登録有形文化財）は、2013年の耐震診断において、耐震補強の必要がないと評価されるなど、その堅牢性が証明されています。「広島市レストハウス」は、爆心地からわずか170mの距離にありながら全壊を免れたことは特筆に値します。

家族

増田清の娘婿は、著名なジャーナリストである阿川弘之氏です。阿川尚之氏と阿川佐和子氏は、増田清の孫にあたります。

まとめ

増田清は、その知名度が低いながらも、日本の近代建築、特にRC構造建築の発展に大きく貢献した建築家です。彼の設計思想と技術は、現代においても学ぶべき点が数多く残されています。今後の研究によって、さらに彼の功績が明らかになることが期待されます。

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