御家人

御家人の歴史と役割

「御家人」という言葉は、武士の中でも特に重要な地位を示す言葉です。この地位は、主に鎌倉幕府に起源を持ち、中世から近世にかけて変遷しました。本稿では、御家人の成立背景や役割、そして時代ごとの変化について詳しく見ていきます。

中世の御家人

御家人という言葉が初めて使われたのは、鎌倉幕府が成立した際です。それまで「家人」と呼ばれていた家臣たちは、鎌倉殿に忠誠を誓うことで「御家人」と呼ばれるようになりました。この主従関係は、源頼朝の権力基盤を固めるために重要な役割を果たしました。

源頼朝は1180年に挙兵し、彼に従う武士たちを「御家人」として組織しました。この中には、武士出身のメンバーと文士出身のメンバーが存在しました。また、治承・寿永の乱の際には、全国各地の武士が頼朝に従うことで新たに御家人に認定され、「本宅安堵」の制度に基づきその地位が保障されました。このように、御家人は頼朝からの恩恵と奉公を通じて、特異な社会的地位を保持することができたのです。

御恩と奉公の関係

御家人が受ける恩恵は、主に「安堵」と新たな所領の与えられる「新恩給与」によるものでした。安堵には、各御家人の所領が保障される「所領安堵」と、主に本宅が保障される「本宅安堵」が含まれています。新恩給与は、戦の功績を上げた者に与えられる新たな所領の配分を指します。これらの恩恵に対して、御家人は鎌倉殿のための軍役や公務を果たす義務があり、これらの義務を「御家人役」と呼びました。

御家人の役割は、戦時だけでなく平時においても重要でした。彼らは鎌倉や京都での大番役、異国警護に従事し、社会秩序を維持するために活動しました。こうした主従関係は、御家人にとって重要な生活基盤となり、御恩と奉公の相互関係を形成していました。

鎌倉中期以降の御家人

鎌倉中期以降、御家人の数やその役割は変化しました。特に関東諸国では圧倒的に多くの御家人が存在し、その数は約469名に達しました。一方で、各地での武士との関係が薄くなり、非御家人と呼ばれる武士も多く現れるようになりました。

14世紀に入ると、鎌倉幕府の崩壊と新政権の成立を受けて「御家人」という言葉は廃止され、従来の地位は揺らぎました。後醍醐天皇の政策は御家人の政治的権限を損ね、多くの武士がこの変化に反発しました。

室町時代と近世の御家人

室町幕府の時代に御家人制度は採用されませんでしたが、戦国時代には、大名の家臣を指して「御家人」という言葉が使われるようになりました。この頃、御家人は具体的には各戦国大名の家臣であり、例えば武田氏や毛利氏の家臣がこれに該当します。

江戸時代には、御家人は徳川将軍家の直参家臣の一種として位置付けられました。この時代の御家人は、もっぱら下級官吏として役割を果たし、知行地を持たない者が大半を占めていました。また、御家人はいくつかの家格に分かれ、特に譜代は将軍と長い付き合いのある者の子孫を示す言葉です。

まとめ

御家人は鎌倉時代から江戸時代にかけて、素晴らしい歴史を持つ存在です。彼らは主従関係の中で重要な役割を果たしながら、時代の変化に応じてその意味や立場を変えていきました。御家人制度の複雑な変遷は、その後の日本の武士階級の在り方にも影響を与えたといえるでしょう。

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