増田貴光

増田貴光の生涯

増田貴光（ますだ たかみつ、生年：1941年6月14日 - 死亡：2015年4月2日）は、映画評論家、司会者、実業家など多岐にわたる顔を持った日本の著名人であった。本名は増田元臣で、東京都文京区本郷で生まれ育った。家庭は看護婦家政婦紹介所を3代にわたり経営していた。彼は幼少期に父を亡くし、母と姉との生活を経て成長した。

学生時代と映画への情熱

慶應義塾大学法学部在学中から、増田は映画批評に興味を持ち、「映画の友」という媒体に記事を掲載するようになる。特に、ルキノ・ヴィスコンティに関するコラムが三島由紀夫の目に留まり、彼との交流が始まった。増田は三島の自決に際して、「ぼくは三島先生に殉死したい」と述べるなど、深い影響を受けていた。大学卒業後は日本航空に入社するも長くは務めず、渡米し南カリフォルニア大学のジャーナリズム科で学びながらアメリカ映画情報の日本への発信に取り組んだ。当時には、ハリウッド・ゴールデングローブ映画祭の審査員としても参加したという。

映画評論家デビュー

帰国後、1970年に日本の映画評論家としての活動を開始し、特に『土曜映画劇場』の映画解説者として多くの視聴者に知られるようになる。「第2の淀川長治」と称され、特有のカメラ目線での挨拶や決めゼリフが視聴者に親しまれた。しかし、和田誠の批判を受けて一部演出を変更せざるを得ない状況にもあった。また、彼は『ベルトクイズQ&Q』の初代司会者としてもお茶の間に広く知られる存在となった。

芸能界からの転落

しかし、増田の生活は順風満帆ではなかった。1974年に急にテレビから姿を消し、様々な原因が取り沙汰されたが、特に「睡眠薬中毒」に関する報道があった。その後、1975年に結婚したものの、性的不能を巡る問題でトラブルが起こり、結婚生活はわずか9ヶ月で破綻。その離婚問題の中で、増田が家庭内で暴力を受けたという事件も含まれており、彼の人生は波乱に満ちていく。

法的トラブルと留置

その後、経済的な困窮から不正行為に手を染め、偽造による詐欺未遂で逮捕されることとなった。逮捕後、自宅から覚醒剤が発見され、1980年には再び覚醒剤取締法違反で実刑判決を受け、2年間の服役を余儀なくされた。増田はこれらの事件をきっかけに、テレビ業界への復帰は難しくなり、家業の紹介所経営に戻ることになった。

晩年と死去

1989年には週刊誌の取材を受け、メディア復帰の可能性について否定した。その後も静かに暮らしていたが、2015年4月2日に73歳で他界した。彼の訃報は日本看護家政紹介事業協会の広報誌に小さく紹介されたことから、その生涯がいかに波乱に富んでいたかを示している。

増田貴光の人生は映画への情熱と共に、成功と失敗の数々が交錯したものだった。彼の存在は、日本の映画評論界における重要な一章として残るだろう。

もう一度検索