士カイ (九真太守)

士䵋（しかい）は、後漢末期から三国時代の呉にかけて活躍した豪族です。彼の生涯は、激動の時代における地方豪族の興亡を色濃く反映しています。

士䵋は、日南太守であった士賜の子として生まれました。兄には交趾太守の士燮、合浦太守の士壱がおり、弟には南海太守の士武がいました。士氏は一族で交州の要職を占め、強大な勢力を誇っていました。

士䵋は当初、徐聞県の県令を務めていましたが、建安元年（196年）に交州刺史の朱符が苛政を恨んだ現地の住民によって殺害される事件が発生します。この混乱を収拾するため、兄の士燮は朝廷に上奏し、士壱を合浦太守、士䵋を九真太守、士武を南海太守に任命させました。これにより、士氏の勢力は交趾・合浦・九真・南海へと拡大し、交州における支配を確立しました。

建安15年（210年）、江東の孫権が配下の歩騭を交州刺史として派遣し、交州への影響力を強めようとすると、士䵋は士燮らと共に孫権に降伏しました。孫権は士燮らの太守の地位をそのまま認め、士䵋も引き続き九真太守を務めることとなりました。

黄武5年（226年）、士燮が亡くなると、士氏の勢力に陰りが見え始めます。士燮の死後、甥にあたる士徽らが呉に対して反乱を起こしますが、鎮圧され、一族は皆殺しにされました。士䵋は、兄の士壱や甥の士廞・士匡と共に、死罪は免れたものの、官位を剥奪され、庶民に落とされました。

しかし、数年後、士䵋は兄の士壱と共に法を犯したとして誅殺されたと伝えられています。かつて交州に勢力を誇った士氏一族は、こうして歴史の波に消えていったのです。

士䵋の生涯は、後漢末期から三国時代にかけての混乱期における地方豪族の盛衰を如実に物語っています。一時は一族で交州を支配するほどの権勢を誇りましたが、中央政権の交代や内紛によって、その地位を失い、悲劇的な最期を迎えることとなりました。

参考文献：
『三国志 正史』6巻（ちくま学芸文庫、筑摩書房、1993年5月）

外部リンク：
三國志 巻49

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