士蔿

士蔿（し い） - 春秋時代の政治家

士蔿は、中国の春秋時代に生きた晋の政治家であり、その生没年は不明です。彼の姓は祁、氏は士、名は蔿、字は子與で、士氏の祖でもありました。士蔿の家系は、祖父の杜伯が周の王朝に仕えていたことからもわかるように、古い伝統を有していました。父は隰叔で、士蔿には士欠や士縠といった息子もいました。また、士会の祖父でもあり、彼の一族は晋の歴史において欠かせない存在でした。

政治的背景

士蔿が活躍した時代は、晋において桓叔や荘伯を祖とする公族が強大化しており、献公はこの流れを警戒していました。このような権力闘争の中で、士蔿は自らの政治的野心を抱き、様々な策略を用いて権力を掌握しようとしました。例えば、献公6年（紀元前671年）には、公子たちと共謀し、富子を讒言して排除しました。この過程で士蔿の冷酷さが表れています。

献公7年（紀元前670年）には、游氏の子供たちを殺害し、翌年には公子らを煽動して游氏を全面的に滅ぼしました。この功績のため、士蔿は春秋時代の権力の流れを変える重要な存在となりました。しかし、彼の手段は過酷であり、多くの者が犠牲になりました。

官職とその影響

士蔿は献公9年（紀元前668年）春に大司空に任命され、政治の中枢に進出しました。しかし、献公が西虢を攻める際には、士蔿はその計画に反対の意見を述べて国を守ろうとしました。さらに、献公14年（紀元前661年）には、太子申生のための城を築く際に、申生に亡命を勧めましたが、彼はその助言に従いませんでした。このように、士蔿は君主に対して真っ向から意見を述べることができる独立した存在感を持っていました。

士蔿はまた、法に関する知識が豊富であったため、晋の国法を整備し『士蔿の法』として知られる法制度を確立しました。後に孫の士会が制定した『范武子の法』と並んで、彼の法は長い間尊重され続けました。

士蔿の思想と評価

士蔿は「一つの国に三人の君主がいる。私は誰に仕えればよいのか」という言葉を残したとされています。これは彼の複雑な立場を示すものであり、個人の忠誠心と国家の命令との間で苦悩していたことを示しています。また、彼は埋め込まれた薪の例に見られるように、命令に従わないことの不敬と敵に対する忠誠のバランスについて考慮する人物でした。

士蔿の行動や決断は、春秋時代の政局に深く影響を与え、彼の政策や法律はその後の晋の歴史にも大きな足跡を残しました。彼の存在は単なる政治家を超え、晋の運命を決定づける重要な役割を果たしました。

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